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医療データ分析の役割とは?分析するデータの種類や活用効果を解説
目次
AIの活用は、あらゆる分野に浸透していますが、医療はその中でも注目度の高い分野です。しかし医療データ分析が医療に対してどのような役割を果たすのか、皆さんご存知でしょうか?
この記事では、医療データ分析の役割を知っていただくために、分析対象となる医療データの種類や、データ活用の効果について解説します。
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医療データ分析の役割とは?
医療の現場では常に膨大なデータが生成されます。そのデータの中には医療の発展にとって有益な情報がたくさん埋まっています。これらを抽出し、迅速かつ正確な意思決定につなげるには、データ分析が欠かせません。
以下では、医療とデータ分析の関係や、データ分析が必要な理由について具体的に解説します。
医療とデータ分析の関係
医療現場では、患者の病歴、検査結果、治療効果など多くのデータが蓄積されます。これら収集されたビッグデータを分析することで、病気の予測や早期発見、治療法の最適化、医療リソースの効率的な活用など、様々なメリットを得ることができます。
また、医療ビッグデータ分析は医療現場でのメリットだけにとどまらず、臨床研究や創薬研究などサイエンスの進展においても重要で、新たな治療法や薬の開発につながる可能性があります。
以上のように、医療の発展においてデータ分析は欠かすことのできない重要な役割を果たします。
医療データ分析が必要な理由
日本政府はビッグデータ利活用を促進する方針を打ち立てており、特に経済成長の重点分野の一つである「健康・医療・介護」での利活用は避けて通れません。そのため、国策として医療ビッグデータの活用推進に向けた多くの取り組みがなされています。例えば、医療データの適切な利活用に向けて、データの収集・保管・分析の方法やプライバシー保護の観点からの法整備が進められています。
医療データ分析は、創薬、診断、治療、予防医療などの医療分野のさらなる向上・発展に繋がります。そのため、医療を軸とした経済成長において医療データ解析は必要不可欠であると言えるでしょう。
医療データ分析を活用することで実現可能な効果
医療データ分析が、医療においてとても重要であることがお分かりいただけたかと思います。ここからは、医療データ分析を行うメリットとして挙げられる具体的な例として、病気の予測、医療コストの削減、医療方法のカスタマイズ、そして新薬開発プロセスへの貢献について、もう少し深掘りして解説します。
病気の予測が可能になる
医療データ分析は、病気の早期予測につながります。また医療データ分析による病気の早期予測や発見ができれば、適切な治療や予防策を提供することもできます。
医療データが増えれば増えるほど、診断の正確さが増します。そのため、過去の症例や患者の診察履歴、またウェアラブルデバイスを介した日常の健康データの収集によって構築される医療ビッグデータは、病気のリスクや発症の可能性を精度よく予測するためにも誰もが望むものと言えます。
医療コストを減らせる
医療現場の運営は専門的な装置や専門性の高いスタッフを必要とするため、非常にコストがかかります。医療データ分析と業務効率化を組み合わせれば、このような負担の大きい医療コストの削減が可能になります。
医療データ分析を活用すれば、過剰な検査や不必要な手続きを減らし、効率的な診断や治療プランを立案することができます。これにより医療リソースの効率的な活用や医療費の削減が実現できるでしょう。
一人ひとりに合った治療が可能になる
医療データ分析が進めば、画一的な治療ではなく、一人ひとりの体質などに合った治療法の提案が可能になると言われています。
特に、遺伝子解析やゲノム医療の進歩によって、個人の遺伝情報を基にした治療法や薬剤の開発が進んでいます。これによって、患者の個別の特徴や病態に応じた最適な治療プランを提供することができ、従来の画一的な処置と比べてもより効果的な治療を行うことが可能になります。
新薬開発プロセスの課題解決になる
医療データ分析は新薬開発プロセスにおける課題解決にも寄与します。新薬を開発するには、膨大な時間・コストがかかります。医療データ分析を活用すれば、ビッグデータから有望な薬剤候補を事前に絞り込むことができ、開発にかかる時間やコストを低減することができ、開発サイクルを加速することができます。
また、開発サイクルが加速されれば、向上実際に開発した新薬が本当に効くかどうかの成功率を高めることができます。
患者毎に合った医療提供が可能になる
カルテや検査結果などのデータを総合的に分析するためには、カルテの電子化が避けて通れません。カルテの電子化がいっそう進めば、医療データ分析と組み合わせることで、患者一人ひとりに最適な医療サービスが提供できる可能性が高まります。
例えば、カルテデータを元にして患者の特性や病態に合わせた個別の治療プランを立案することができます。これにより、患者の治療効果や満足度の向上が期待されます。
分析活用するための医療データの種類と特徴
医療ビッグデータは医療データ分析の可能性を広げますが、ビッグデータは量だけでなく、データの多様性も重要な要素です。そのため、医療データとしてどのような種類があるのかを知ることは、医療データ分析を活用するうえで大事なことです。
そこで、以下では代表的な医療データの種類とその特徴について解説します。
レセプトデータ
レセプトデータとは、医療機関が発行する「診療報酬明細書」のデータを指します。診療報酬明細書には「入院」「外来」「歯科」「調剤」の4種類があり、診療や処方箋の情報、医療機関の情報、薬剤や治療内容、診断コードなどが含まれます。そのため、医療サービスの提供状況や会計に関する情報が得られます。
このデータは、医療費の精査や請求の正確性の確認、医療機関の経営分析などに活用されます。また、大規模なレセプトデータを用いて、病気の流行状況や薬剤の副作用などを追跡・予測する研究にも活用されます。
電子カルテデータ
電子カルテデータとは、医師の診断の結果得られた患者の診療情報が電子的に記録されたデータです。また診断フロー別に、問診データ、検査・診断データ、処方データなどに分けることもできます。主に診断結果、処方情報、手術記録、検査結果、アレルギーや既往歴などの情報が含まれます。
電子カルテは患者の医療記録を総合的に管理できるため、医師や医療機関の間での情報の共有や、迅速な参照が可能になります。
また医療データ分析を行うことで、診療の効果やリスク、治療法の効果性などを評価し、個別の患者の治療計画の最適化に役立てることができます。
DPCデータ
DPCとはDiagnosis Procedure Combinationの略で、医療費の点数化や評価を行うために収集されるデータです。入院患者の病名や症状、診療行為、手術の内容、検査結果、入院期間などが含まれています。レセプトデータと異なり、手術・治療にかかる費用等に特化した情報が得られます。
DPCデータは厚生労働省から定められた一部の対象病院に限られるため、大規模な病院について知ることができます。
DPCデータは医療機関の業績評価や医療費の評価に活用されます。また、データの分析によって、手術のリスクや入院期間の適正化、医療の質の向上などを目指す取り組みにも役立てられます。
検査データ
検査データとは、患者の健康状態を把握するために実施された血液検査や画像検査(MRIやCTスキャンなど)、生体情報のモニタリングなど、さまざまな種類の検査結果を集めたデータを指します。
検査データは、患者の病状の評価や疾患の診断、治療効果の評価にとって重要な情報を含んでいます。そのため、データを分析すれば、異常値の検出やパターンの抽出、病気の早期発見や予測、治療の個別化などが可能になります。
また、大量の検査データを統合的に分析することで、疾患のメカニズムや新たな診断基準の開発にも活用することができます。
医療データ分析が活用されている3つの事例を紹介
多種多様な形態で収集された医療データの分析は、既にさまざまな分野で活用されており、医療の向上や効率化に貢献しています。では、具体的に医療データ分析を活用した事例としてどのようなケースがあるのでしょうか?
以下では、医療データ分析が活用されている具体的な事例を紹介します。
国際研究・ヒトゲノム計画
「ヒトゲノム計画」とは、人間の遺伝情報を意味する「ヒトゲノム」の全てを解読し、医学等の分野に役立て、遺伝子情報に基づいた治療を推進するために実施された国際プロジェクトです。2003年に計画完了宣言がなされましたが341箇所のギャップが残されていました。これらは約20年後である2022年に解決され、ヒトゲノム配列の完全解読が完了しました。
解読されたヒトゲノムデータに基づき、遺伝子変異と疾患の関連性の解明や、特定の遺伝子変異を持つ患者に対する適切な治療法の開発などが進んでいます。
大阪大学大学院・特定疾患の発症確率
大阪大学大学院の研究グループは、大量の健診データを利用し、AIモデルを作成することで、糖尿病の発症確率を高精度で予測できることを明らかにしました。
従来は統計モデルとAIモデル(機械学習)の精度には差はないと考えられていましたが、今回の研究で機械学習の優位性を明らかにした点が画期的でした。
この成果により、個人が病気の発症確率を事前に知ることで、生活習慣改善のモチベーションを高めることができます。
横浜市・医療政策への活用
横浜市では、横浜市では、エビデンスに基づく政策立案(EBPM、Evidence Based Policy Making)の取組として、独自に医療ビッグデータの分析に取り組んでいます。
市内の医療機関から集められた患者の診療情報や薬剤データなどはYokohama Original Medical Data Base(YoMDB)に集約され統合管理されています。
これらのデータを分析することで、医療ニーズの把握や地域の医療サービスの改善が行われています。医療ビッグデータの活用により、効率的な医療政策の実施が可能となった例と言えます。
医療データ分析の課題と対策
医療データ分析の活用は、すでに医療現場の改善、国際的な研究プロジェクト、政策決定のためのエビデンスなどに活用されており、まだままだ多くの可能性を秘めていますが、実際に活用するためには乗り越えなければならない課題がいくつか存在します。
以下では、医療データ分析の課題とそれに対する対策について解説します。
個人情報などでのセキュリティ問題
医療データはセンシティブな個人情報を多く含むために取り扱いには細心の注意が必要です。その上でも職員のミスや内部不正、外部攻撃等によるセキュリティリスクがどうしても生じてしまいます。
これらを防ぐためには、システム制限やアクセス管理、データ暗号化などのセキュリティ対策が必要です。また、情報ガバナンスの強化や従業員の教育も重要です。
医療機関は上記のようなセキュリティ対策を徹底し、情報の保護とセキュリティ問題の防止に努める必要があり。継続的なセキュリティ対策と情報ガバナンスの強化は、医療データ分析を活用した医療の信頼性と安全性を確保するために不可欠と言えます。
収集データのガラパゴス化
医療データは、レセプトデータや電子カルテデータなどさまざまな形式で収集されていますが、その形式や構造がバラバラであることが課題となっています。これをガラパゴス化と呼びます。
この問題に対処するため、日本政府はマイナンバー制度を活用してレセプトデータを個人に紐づけ、クラウド化する計画を進めています。また、電子カルテデータに関しても、医療情報の取り扱いに関するガイドラインが整備されています。これにより、データの安全性やプライバシーの保護が確保され、信頼性のある医療情報の管理が図られています。
これらの対策によって、レセプトデータや電子カルテデータのガラパゴス化を解消し、データの一元管理と活用が可能となることが見込まれています。
現場でのデータサイエンティストの必要性
医療データの分析には高度なスキルが必要であり、データサイエンティストの存在が重要です。しかし、現場におけるデータサイエンティストの不足が課題となっています。
データサイエンティストは、膨大かつ多様な医療データを収集・統合し、解析する能力や、統計学や機械学習の知識を駆使して予測や診断支援、治療効果の評価を行います。
また、倫理的な問題にも対応し、プライバシーやセキュリティに配慮したデータ分析の実施も期待されています。
データサイエンティストの不足を解消するためには、データサイエンスに関する教育プログラムの充実や専門家の育成が必要です。さらに、IT人材と医療専門家との連携を促進し、データサイエンティストが現場で活躍できる環境を整備することも重要です。
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医療データ分析を実施することのできるデータサイエンティストの育成には時間がかかります。少しでも早くデータ分析を取り入れるためにも、TRYETINGのノーコードAI予測ツール「UMWELT」の活用がおすすめです。
UMWELTは専門的な知識がなくても多数のアルゴリズムを搭載しており、さまざまな数量のデータを自動的に分析し予測することができます。また多数のアルゴリズムを組み込んでおり、大量のデータを自動的に分析し予測することが可能です。
まとめ
日本は高齢化先進国であり、医療の効率化や医療サービスの向上は日本における最大の課題と言っても過言ではないでしょう。医療分野でのデータ活用はまさにこの課題を解決するための突破口になるものと期待されます。
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