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AIを教育に導入するメリットとは?学習手法や事例も紹介
目次
様々な領域で注目されているAIですが、教育の現場でどう用いられているのか気になる方も多いのではないでしょうか。今回は、柔軟なAIの導入が難しい教育分野において、AIの導入によって実際にできることを、メリットとデメリット、具体的事例を踏まえて解説します。
▼更にAIについて詳しく知るには?
AI(人工知能)とは?導入するメリットと活用例やおすすめのツールを紹介
▼社内のデータをAI化するには?
ノーコードAIツールUMWELT紹介ページ(活用事例あり)
AIとは人間の知能を持つコンピューターシステム
AI(Artificial Intelligence)は、人工知能と呼ばれ、人間の脳が行っている認識、思考、学習といった能力・活動を、コンピューターなどを使って模倣し再現するシステムです。しかし、AIにはまだ明確な定義はなく、完全に人間と同等の知的活動を行う人工システムが生まれているわけでもありません。現在AIが大きな注目を集めているのは、「ディープラーニング」や「機械学習」といったAIに関連した新技術が登場したことで、実用化が現実のものとなり始めたためです。
1.AIの概要
Artificial Intelligence(人工知能)の略であるAIは、人工的に作られた知能のことを指しますが、それが指す意味は広義で、学術的にも一意に定義できるものではありません。AIは大きく、「特化型人工知能」と「汎用人工知能」の2つに分類されます。
特化型人工知能は画像や音声の自動認識、自動運転といった、ある特定の機能に特化したもの、汎用人工知能は、人間と同様に情報をもとに自ら考えて応用することができる人工知能です。汎用人工知能が完成した際、シンギュラリティ(技術的特異点)が起こるとされ、人間を超える知能をもつ人工知能の発明を意味します。
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2.AIで実現できること
AIの実現でできるのは、文章理解、音声理解、画像認識、推論、機械制御といった領域です。文章理解では、書かれた文章を理解して、翻訳、要約などを行ったり、与えられたデータを用いて記事を作成する技術が存在します。音声理解は、GoogleアシスタントやSiriを始めとしたスマートスピーカーが既に実用化・商用化されていることから、非常に注目が集まっています。研究領域としては「自然言語処理」がこれにあたります。
画像認識は、広く実用化されつつある顔認証システムが例に挙げられます。ディープラーニングを用いた顔認証では、顔を一部しか捉えられなくても認証が可能になるなど、高性能のものが開発されています。他にも、オセロ、チェス、将棋、囲碁といったルールのあるゲーム上で回答を推測する技術、自動車、産業用ロボット、センサーの最適な制御を行う機械制御においても広く活用されています。
3.AIの重要性
AIが重要な理由は、その多機能さに見ることができます。例えば、データを用いた反復型の学習と発見の自動化、家庭や職場で使われている既存の製品の改善・向上、学習アルゴリズムを通じた最適化、人間を上回る正確性、データ活用の最大化などが挙げられます。
教育にAIを導入する4つメリット
AIを教育に導入することで、人間だけでは手が回らないきめ細やかなサポートができます。生徒一人ひとりに合わせた柔軟性のある指導を行うために、指導を補助する材料となる情報を収集、与えることのできるAIが教育現場に求められています。ここでは、どのようなメリットが得られるのかをご紹介します。
1.個人のレベルに適した学習
AIの導入で、子どもの学習レベルに適したアドバイスを提供できます。知識を吸収するスピードは一人ひとり異なるため、大人数の授業などでは各自の理解度に差が生まれてしまうことも少なくありません。そのような場合、「分からない部分を質問できずに授業に付いていけなくなってしまった」というケースが起こる可能性もあるわけです。その点、AIを導入すれば学習の過程で頻繁に起こり得る「そもそも何が分からないのかさえ分からない」という状況でも、最適な道筋を示せるようになります。
2.リアルタイムのアドバイス
教育にAIを導入することで、一人ひとりの学力状況を適切に把握し、いま学習するべき内容をリアルタイムでアドバイスすることが可能です。そのため、勉強に無駄なロスが発生するリスクを減らせます。もちろん、すでに学習している内容に関しても、より理解度を高めるためのフォローをしていくため、復習を兼ねた勉強なども効率良く進めることができるでしょう。教師や塾講師などは、こうした「一人ひとりの学習状況に適した指導」を常に完璧に行っていくのは難しい傾向にあるため、このようなタスクをAIに任せられるのは大きなメリットとなります。
3.成績の分析
AIが教育に与えるメリットに成績を正確に分析できる点が挙げられます。過去のデータを基にAIが成績を正確に分析するため、平等に評価を下せるだけでなく学力を上げるために必要なことが把握しやすくなります。教育にAIを使っていく人は、普段の生徒の学習への取り組み方を見ながら、AIが下す判断を参考にして、成績を分析し評価しましょう。
4.答案の採点を自動化
採点の自動化は以前から「OCR」として確立していた領域ですが、昨今のAIの文字認識技術の目まぐるしい進化でその精度が上がり、数字や英文では実用域に入りつつあります。また、手書きの答案を即時に採点してくれるオンライン教育サービスも登場しています。
さらに、教育業界では2020年の学習指導要領の改訂に伴って、記述式答案がますます増えることが予想されます。採点の自動化は、採点業務の効率化や教育サービスのレベル向上だけでなく、教員の負担を軽減し、より本質的な教育へ時間やリソースを割くことができるという効果も期待されています。
教育にAIを導入するデメリット
AIが仕事に与えるデメリットの1つに、雇用が減ることが挙げられます。作業をRPA化したり、ビジネスツールを使うことで時間の短縮や作業を減らすことができるので、多くの雇用を必要としなくなります。経営者でAIを使っていく人は、雇用が減って経費削減できた分、従業員を育成する費用に充てて他の企業と競争していく力を備えていきましょう。
また、情報漏洩のリスクがあります。AIのビジネスツールはPC上で管理していくため、外部からサイバー攻撃を受けたり、セキュリティーが弱い機材をIoTなどで操作する場合、情報漏洩のリスクがあります。AIを駆使したセキュリティソフトを活用することで、セキュリティを高め情報漏洩を防ぐ必要があります。
さらに、リスクマネジメントが難しいことが挙げられます。AIが不具合を起こしたまま分析、判断をしてしまったり、悪意のあるデータから正確な分析ができないことがあるのでAIを組織的に管理していく必要があります。AIのリスクマネジメントには、AIのリスクを管理するコンサルティングサービスなどを利用するのが良いでしょう。
AIを用いた学習手法
AI技術が教育分野で活用されている事例として、「アダプティブ・ラーニング(適応学習)」と呼ばれる学習手法があります。これは、子どもの習熟度や理解度に合わせることが可能な教育ビッグデータやAI技術を使った新しい教育手法です。
子どもの習熟度や理解度に応じて出題する問題を変えたり、間違えた問題をもう一度出題して解答させたり、授業内容や学習する順番を変更するなど、子ども一人ひとりに個別最適化されたオーダーメイドのような学び方を提示します。学びの個別最適化は、学習効率を高めるだけではなく、優秀な子どもの特徴から成績に結び付く要因を分析し、他の子どもへの指導に活用する、認知特性や学習障害に対応した学習方法・教材を提供するなど、今後さらなる進化が期待される分野です。ここでは実際のサービスを挙げてご紹介します。
1.人工知能によって最適化された教材
日本でのアダプティブ・ラーニングの取り組み事例である「キュビナ(Qubena)」は、算数・数学のAI(人工知能)型タブレット教材です。子どもがタブレット端末で学習した操作ログや計算過程、回答データを、AIを用いて分析することで、つまずく原因となっているポイントを特定し、その子どもが解くべき問題へと自動的に誘導することで効率的な学習を実現するアダプティブ・ラーニング教材です。同じ誤答でも、間違え方によって、次に別の問題を提示します。
AIが一人ひとりの学習フローを最適化するので、クラス内の子ども間に学力の差がある場合にも個別最適な学びを提供し、基礎から応用まで様々なレベルに応じた学習・学習の効率化をできることが特徴です。効率の良い学習で捻出した時間で、より先の単元の学習や探究学習を行い、さらなる知識を習得するサイクルの構築にもつながっていきます。
2.AIを活用した学習システム
AIを活用した学習システムに、AI活用ラーニングシステムである「アタマプラス(atama+)」が挙げられます。アタマプラスは、子ども一人ひとりの「得意」「苦手」「伸び」「つまずき」「集中状態」「忘却度」などのデータをAIが分析し、その子どもにあった次世代の個人レッスンを作成します。これはAIが教科の体系や得意、苦手、目標、過去の学習内容などを瞬時に分析し、一人ひとりに最適な学習カリキュラムです。これにより、それぞれの子どもにとって理解しやすい順番で学びを進めることで、苦手な単元も最小限の学習量で克服できるようになるとしています。
3.レコメンドエンジン
アダプティブ・ラーニングのプラットフォームとして、2008年にアメリカで設立されたのが「ニュートン(Knewton)」というアダプティブ・ラーニングの先進企業です。ニュートンのアダプティブ・ラーニングプラットフォームで提供されるレコメンデーション機能では、学習者本人の知識や理解度などの学習履歴データから、学習者の習熟度や理解に合わせて、リアルタイムに最適な問題がレコメンド(提案)されます。これにより、わかりきっている問題を何度も解答する必要はなくなり、問題が難しすぎて解答に行き詰まるということもなくなります。
加えて、ラーニング・アナリティクス(学習分析)の機能も有しています。これらの機能により学習者の状況を把握し、個人の理解度に合わせた学習サービスを提供しています。
AIを教育に活用した事例
AIを教育分野に活用されている例は既に多く存在します。各システムがどのような役割を果たしているのか、人間が指導するのとどう異なるのか、活用方法など、実際の事例を踏まえて解説します。
1.学習支援システム
学習支援システムとは、個別指導のAI版であり、AIが人間の家庭教師の役割をします。人間の家庭教師のように生徒の間違いを認識し、正しい答えを教え、ニーズや弱点に応じて今後の学習内容をカスタマイズするのが理想です。学習支援システムを実装することで、より多くの生徒が個別学習システムにアクセスし、一人一人のニーズに合った指導を受けることができます。このようなことは、AIシステムの実装なしには難しいでしょう。
さらに、学習支援システムでは、生徒が知的学習支援システムを利用するほどより正確かつ適切に指導できるようになります。仕組みとしては、まず生徒が問題を解くと、システムが生徒の解答をデータベースと比較し、必要に応じて解答を修正します。そして、生徒が学習を進めるにつれ、進捗に基づいてフォローアップ用学習や個別資料を推薦します。 具体的には、解答例、誤答例、生徒の進歩に関する統計的データ、難易度、そして関連トピックといったデータが用いられます。
2.音声認識を活用したノートの取り方
音声認識技術によって、教室で自動的にノートを取ることが可能です。これによって、学生はノートの取り方に気を取られず、講義を聞くことに集中できます。教師にとっては、クラス終了時の講義要約を準備するのが楽になるだけでなく、学生の質問から自然発生的に生じた議論を簡単に記録しておくことができます。このように、音声認識技術の活用が学生・教員ともに効果の高い利用がなされる可能性があります。
3.出席確認の自動化
AIの画像認識技術により、学生の出席を自動的にカウントすることができ、教員の業務負担の軽減につながっています。カウントは生徒の顔認識によって行われるので他生徒の成りすましなどは過去の話になります。実際の教室への出入りをカウントするだけでなく、外部からパソコン経由で授業に参加している学生も顔認識によってカウントすることが可能です。
4.音声アシスト・FAQの自動化
自動対話型のチャットボットを活用する教育機関が増えています。例えば、アメリカにあるジョージア工科大学は教育助手「Jill Watson」というチャットボットを利用しています。このチャットボットは、学生の多くが本物の教育助手だと勘違いするレベルのサポートを行うことができました。多くの質問にチャットボットが対応できるようになることで、教員への負担を大きく軽減することができると考えられます。
5.受講中の生徒のエンゲージメントを計測
出席だけでなく、教室内やパソコンで受講している各生徒のエンゲージメント(表情・集中度など)の計測も可能です。それらのデータを元に教師はエンゲージメントをさらに向上させるためにコースの内容を改善していくことが可能になり、エンゲージメントを示さない生徒にはフォローアップすることも考えられます。各生徒のエンゲージメントデータを元に教師は教育の質を高めていくとが可能になります。
中国の杭州にある学校では、このような技術がすでに使われており、パソコンから学校の授業や講演を聴いている方のエンゲージメントを計測している企業まで登場しています。
6.進路アドバイス
進路アドバイスには、株式会社ティファナ・ドットコムの提供する「AIさくらさん」が便利です。進路決定や準備には教員、学生の両者にとって多大なコストがかかります。学生が履歴書などの資料の書き方や面接の仕方を学ぶにあたり、教師が時間を割いて学生とワンツーマンで教え込む必要があります。そこで、これら全てAIさくらさんがサポート役として入ると教師は楽になるのではないでしょうか。
例えば、履歴書の書き方で不明点があれば、AIさくらさんによって質問応答ができます。面接については、就職用と進学用と分けて学生対AIさくらさんで面接をして、面接後には、判定して結果を出すこともできます。また、進路の相談役としても聞き受け入れてアドバイスすることもできます。さらには、やり取りデータを集積することで、次年度、更に次年度へとノウハウを活かすことが可能になります。
このように、人間にしかできないと考えられるような領域にも、AIのサポートを導入することで人手不足を埋め合わせる可能性が考えられます。
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まとめ
今回解説したような教育の領域以外でも、ビジネスにAIを導入することで大きなインパクトを生むことができる事例がたくさんあります。AIは様々な課題解決の面でこれからますます重要なツールとなってくるでしょう。
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