食品ロス対策の先進企業10選！コスト削減と環境貢献を両立

この記事では、食品ロス対策に取り組む先進的な企業10社の具体的な取り組みを紹介します。イオン、日本マクドナルド、コカ・コーラボトラーズジャパンなど、業界をリードする企業の成功事例から、食品ロス削減のための効果的な戦略と実践方法を学ぶことができます。

さらに、企業が食品ロス対策に取り組む意義や、それによってもたらされるコスト削減効果、環境負荷の軽減、企業イメージの向上などの具体的なメリットを解説します。中小企業でも実践可能な対策や、関連する法律・支援制度についても詳しく説明しているため、企業規模に関わらず食品ロス対策に取り組もうとする方々に有益な情報源となるでしょう。

1. 食品ロス問題と企業の取り組みの重要性

1.1 食品ロスの現状と社会的影響

食品ロスとは、本来食べられるにもかかわらず廃棄される食品のことを指します。日本における食品ロスの現状は深刻で、年間約472万トンもの食品が無駄に捨てられています。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた食料援助量とほぼ同等に相当します。

食品ロスがもたらす社会的影響は多岐にわたります。

• 環境負荷の増大：食品の生産、加工、輸送、廃棄の過程で大量のCO2が排出されます。
• 経済的損失：食品ロスによる経済損失は年間約4兆円と推計されています。
• 資源の無駄遣い：食品生産に使用された水、肥料、エネルギーなどの資源が無駄になります。
• 倫理的問題：世界の飢餓問題が深刻化する中、大量の食品廃棄は倫理的に問題があります。

このような状況を受け、消費者庁は食品ロス削減の重要性を訴えています。企業、特に食品関連事業者には、この問題に対する積極的な取り組みが求められています。

1.2 企業が食品ロス対策に取り組む意義

企業が食品ロス対策に取り組むことには、以下のような重要な意義があります。

1.2.1 1. 社会的責任の遂行

企業の社会的責任（CSR）の観点から、食品ロス削減は重要な取り組みです。持続可能な社会の実現に向けて、企業が果たすべき役割は大きく、食品ロス対策はその具体的な行動の一つとなります。

1.2.2 2. コスト削減と経営効率の向上

食品ロスを削減することで、原材料費や廃棄物処理費用の削減につながります。これは直接的な経営効率の向上に寄与し、企業の競争力強化にもつながります。

1.2.3 3. 企業イメージの向上

環境問題や社会課題に積極的に取り組む企業は、消費者からの支持を得やすくなります。食品ロス対策は、企業の社会貢献活動として高く評価され、ブランドイメージの向上につながります。

1.2.4 4. イノベーションの促進

食品ロス対策に取り組むことで、新たな技術やビジネスモデルの開発が促進されます。例えば、AI技術を活用した需要予測システムや、食品リサイクル技術の開発などが挙げられます。

1.2.5 5. 法規制への対応

食品ロス削減推進法の施行により、企業には食品ロス削減の取り組みが求められています。法令遵守の観点からも、積極的な対策が必要です。

1.2.6 6. SDGsへの貢献

食品ロス削減は、国連の持続可能な開発目標（SDGs）の目標12「つくる責任 つかう責任」に直接関連しています。企業がSDGsに貢献することは、国際社会からの評価にもつながります。

企業の取り組み	期待される効果
需要予測システムの導入	在庫の適正化、廃棄ロスの削減
フードバンク活動への参加	社会貢献、食品の有効活用
賞味期限の延長技術開発	商品寿命の延長、廃棄量の削減
リサイクルループの構築	資源の有効活用、環境負荷の低減

以上のように、企業が食品ロス対策に取り組むことは、社会的責任を果たすだけでなく、経営面でもメリットが大きいと言えます。今後、より多くの企業が積極的に食品ロス削減に取り組むことが期待されています。

2. 食品ロス対策に成功している先進企業10選

食品ロス問題に取り組む企業が増えています。ここでは、独自の戦略や革新的なアプローチで食品ロス削減に成功している10社を紹介します。これらの企業の取り組みは、他社にとっても参考になるでしょう。

2.1 イオン：食品リサイクルループの構築

イオングループは、食品リサイクルループの構築に力を入れています。店舗から出る食品廃棄物を堆肥化し、契約農家で使用。そこで育てられた野菜を再び店舗で販売するという循環型のシステムを確立しています。

2.1.1 イオンの食品リサイクルループの特徴

• 店舗での食品廃棄物の分別徹底
• 専門業者による高品質な堆肥化
• 契約農家との密接な連携
• リサイクル野菜の販売による消費者啓発

この取り組みにより、イオンは食品廃棄物を2025年までに半減（2015年度比）させる目標です。また、環境負荷の低減だけでなく、地域農業の活性化にも貢献しています。

詳細はイオンの公式サイトでご確認いただけます。

2.2 日本マクドナルド：AI需要予測システムの導入

日本マクドナルドは、物流を一手に任せる物流会社を通じ、AIを活用した需要予測システムを導入し、食品ロスの削減に取り組んでいます。このシステムは、過去の販売データや気象情報、イベント情報などを分析し、各店舗の時間帯別の需要を高精度で予測します

2.2.1 AI需要予測システムの主な機能

• 店舗ごとの販売傾向分析
• 天候や曜日、イベントの影響を考慮した予測
• リアルタイムでの発注量調整
• 従業員のシフト最適化

この取り組みにより、日本マクドナルドは物流の効率化を進め、配送頻度を平均約20％削減しました。同時に、人件費の最適化や顧客満足度の向上にもつながっています。

2.3 コカ・コーラボトラーズジャパン：賞味期限間近商品の有効活用

コカ・コーラボトラーズジャパンは、賞味期限が近づいた商品の有効活用に取り組んでいます。従来は廃棄されていた商品を、フードバンクや社員販売、イベントでの無料配布などに活用しています。

2.3.1 賞味期限間近商品の活用方法

活用方法	内容	効果
フードバンクへの寄付	賞味期限3ヶ月以上の商品を寄付	食品ロス削減と社会貢献の両立
社員販売	賞味期限間近の商品を社内で販売	従業員の福利厚生と廃棄削減
イベントでの無料配布	地域イベントなどで商品を配布	ブランド認知向上と廃棄削減

これらの取り組みにより、コカ・コーラボトラーズジャパンは年間約91万本の飲料の廃棄を削減しています。また、社会貢献活動としても高く評価されています。

2.4 セブン＆アイ・ホールディングス：フードバンク活動の推進

セブン＆アイ・ホールディングスは、グループ全体でフードバンク活動を積極的に推進しています。販売期限が近づいた食品や、製造過程で発生する規格外品を、NPO法人を通じて生活困窮者に届けています。

2.4.1 セブン＆アイのフードバンク活動の特徴

• グループ企業全体での取り組み
• 専門のNPO法人との連携
• 店舗スタッフへの教育プログラムの実施
• 寄贈品の品質管理体制の構築

この活動により、セブン＆アイ・ホールディングスは年間約5,000キロの食品をフードバンク団体へ寄付しています。食品ロスの削減だけでなく、地域社会への貢献としても大きな意義を持っています。

詳細はセブン＆アイ・ホールディングスの公式サイトでご確認いただけます。

2.5 キユーピー：加工食品の製造工程改善

キユーピーグループでは、サプライチェーンの各段階でさまざまな工夫を重ね、グループ内で連携し、食品ロス削減を実現しています。

2.5.1 キユーピーの製造工程改善の主な取り組み

• 原料の歩留まり向上技術の開発
• 製造ラインのIoT化による生産効率の向上
• 規格外品の有効活用（飼料化など）
• 包装材料の最適化による廃棄物削減

これらの取り組みにより、キユーピーは食品残さ削減率59.6%、野菜未利用部有効活用率82.7％、商品廃棄量削減率75.5％（2015年度比/2023年度実績）を実現しています。

2.6 日清食品：賞味期限延長技術の開発

日清食品は、賞味期限延長を目指し、独自技術の開発に成功しました。この結果、賞味期限を従来の20日間から40日間に延長し、食品ロスの削減に大きく貢献しています。既に販売する生中華麺使用の商品ラインアップの約80%で賞味期限の延長を実現しています。

2.6.1 賞味期限延長技術の概要

• 原材料の品質管理強化
• 製造環境の衛生管理の徹底
• パッケージ素材の改良

賞味期限が近づくと店頭では値下げして販売します。賞味期限を延ばした商品の値下げした割合を示す見切り率は、「日清の太麺焼きそば」で5.3％から1.6％、小売店の利益向上や生産性向上にも貢献しています。

2.7 ローソン：AI発注システムによる在庫最適化

ローソンは、AIを活用した発注システムを導入し、店舗の在庫最適化を図っています。このシステムは、過去の販売データだけでなく、天候や近隣のイベント情報なども考慮して、最適な発注量を算出します。

2.7.1 AIを活用した発注システムの特徴

• 機械学習による販売予測精度の向上
• 天候や地域イベントの影響を考慮した発注量調整
• リアルタイムでの在庫状況把握
• 店舗スタッフの経験値の数値化と活用

この取り組みにより、ローソンは食品廃棄量を2030年に2018年の半分にすることを目指しています。

2.8 サントリーホールディングス：原料の有効活用と副産物の再利用

サントリーホールディングスは、飲料製造過程での原料の有効活用と副産物の再利用に力を入れています。特に、ビール製造時に発生する副産物の活用に積極的に取り組んでいます。

2.8.1 サントリーの副産物再利用の主な取り組み

副産物	再利用方法	効果
ビール粕	飼料化、肥料化	廃棄物削減、循環型農業への貢献
酵母	健康食品原料として活用	付加価値創出、廃棄物削減
樽材	家具や建材として再利用	資源の有効活用、環境負荷低減

これらの取り組みにより、サントリーホールディングスは国内工場における副産物の再資源化率100％を達成しています。食品ロスの削減だけでなく、循環型社会の実現にも貢献しています。

詳細はサントリーの公式サイトでご確認いただけます。

2.9 コークッキング：フードシェアリングサービスの運営

コークッキングは、フードシェアリングサービス「TABETE」を運営し、食品ロス削減に貢献しています。このサービスは、まだおいしく安全に食べられるのに、店頭では売り切るのが難しい食事を「レスキュー(購入)」できるフードシェアリングサービスとなっています。

2.9.1 TABETEの主な特徴

• パンや惣菜などの販売店との消費者を直接繋ぐプラットフォーム
• 消費者への迅速な情報提供（売れ残り情報など）
• 食品ロス削減の啓発活動

コークッキングは会員約77万人の会員を通じて、掲載店舗約2,600店舗の食品ロス削減に貢献しています。また、消費者の食品ロスに対する意識向上にも役立っています。

2.10 味の素：調理ロス削減レシピの提案

味の素は、家庭での調理ロス削減を目的としたレシピの開発と提案に力を入れています。食材を無駄なく使い切るレシピや、余った食材の活用法を紹介することで、消費者の食品ロス削減を支援しています。

2.10.1 調理ロス削減レシピの特徴

• 食材の可食部を最大限活用するレシピ
• 余り物を美味しくアレンジする方法の提案
• 保存方法や調理技術のアドバイス
• 季節や地域性を考慮したレシピ開発

この取り組みにより、味の素は消費者の食品ロス意識向上に大きく貢献しています。また、自社製品の新たな使用方法提案にもつながっています。

詳細なレシピは味の素パークの公式サイトでご覧いただけます。

3. 企業の食品ロス対策がもたらす効果

食品ロス対策に取り組む企業は、様々な面でポジティブな効果を得ることができます。以下では、主な効果について詳しく解説します。

3.1 コスト削減効果

食品ロス対策は、企業にとって大きなコスト削減につながります。具体的には以下のような効果が期待できます。

• 原材料費の削減
• 廃棄物処理費用の低減
• 在庫管理コストの最適化
• 生産効率の向上

3.1.1 原材料費の削減事例

ニチレイフーズでは、機器メーカーと共同で鶏肉加工品のAI選別技術を開発しました。同技術導入後、鶏肉加工品の製品廃棄削減率を約50％（半減）に削減しました。

3.1.2 廃棄物処理費用の低減

食品ロスを削減することで、廃棄物処理にかかる費用を大幅に抑えることができます。食品製造業では廃棄物処理費用が年間数億円に上る企業もあり、その削減効果は非常に大きいといえます。

3.2 環境負荷の軽減

食品ロス対策は、環境保護の観点からも非常に重要です。以下のような環境負荷軽減効果が期待できます。

• 温室効果ガス排出量の削減
• 水資源の節約
• 土地利用の効率化
• 生物多様性の保護

3.2.1 温室効果ガス排出量の削減効果

IPCCの報告書「気候変動と土地」では、10〜16年に排出された温室効果ガスのうち、8～10％は食品ロスから出たものと推定されており、自動車から排出される量とほぼ同じです。
企業が食品ロス対策に取り組むことで、この数字を大幅に削減できる可能性があります。

3.2.2 水資源の節約

食品の生産には大量の水が使用されます。食品ロスを削減することで、水資源の無駄遣いを防ぐことができます。例えば、畜産の飼料として多く消費されているトウモロコシですが、1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800 リットルの水が必要とされています。

3.3 企業イメージの向上

食品ロス対策に積極的に取り組むことで、企業のイメージ向上につながります。具体的には以下のような効果が期待できます。

• 消費者からの支持獲得
• 投資家からの評価向上
• 従業員のモチベーション向上
• ブランド価値の向上

3.3.1 消費者からの支持獲得

消費者庁の調査によると、約80%の消費者が食品ロス削減に関心があると回答しています。食品ロス対策に取り組む企業は、こうした消費者からの支持を得やすくなります。

3.3.2 ESG投資の観点からの評価向上

近年、環境（Environment）、社会（Social）、ガバナンス（Governance）を重視するESG投資が注目されています。食品ロス対策は、特に環境面での取り組みとして高く評価され、投資家からの支持獲得につながります。

3.4 社会貢献と地域連携の促進

食品ロス対策は、企業の社会的責任（CSR）活動の一環としても重要です。以下のような効果が期待できます。

• フードバンク活動への参加
• 地域コミュニティとの連携強化
• 食育活動の推進
• SDGsへの貢献

3.4.1 フードバンク活動への参加事例

イオン株式会社は、全国のイオン店舗で食品ロス削減とフードバンク活動を連携させた取り組みを行っており、地域の福祉施設等に提供しました。

3.4.2 SDGsへの貢献

食品ロス対策は、国連の持続可能な開発目標（SDGs）の目標12「つくる責任 つかう責任」に直接的に貢献します。これにより、企業の国際的な評価向上にもつながります。

3.5 イノベーションの促進

食品ロス対策への取り組みは、新たな技術やビジネスモデルの開発を促進します。以下のような効果が期待できます。

• AI・IoT技術の活用
• 包装技術の革新
• 食品リサイクル技術の進歩
• 新規ビジネスモデルの創出

3.5.1 AI・IoT技術の活用事例

株式会社セブン-イレブン・ジャパンは、AIを活用した需要予測システムを導入し、食品ロスの削減と同時に欠品率の低下を実現しました。また、2030年までに食品廃棄物量50％削減（2013年度比）する目標を掲げています。

3.5.2 食品リサイクル技術の進歩

食品ロス対策の一環として、食品リサイクル技術の研究開発が進んでいます。例えば、キリンホールディングス株式会社は、ビール製造時に発生する副産物を飼料や肥料として有効活用する技術を開発しています。

効果カテゴリ	主な効果	具体例
経済的効果	コスト削減、利益率向上	原材料費削減、廃棄物処理費用低減
環境的効果	環境負荷軽減、資源効率化	CO2排出量削減、水資源節約
社会的効果	企業イメージ向上、社会貢献	消費者支持獲得、フードバンク活動
技術的効果	イノベーション促進、競争力向上	AI活用、包装技術革新

以上のように、企業の食品ロス対策は多岐にわたる効果をもたらします。これらの効果は互いに関連し合い、企業の持続可能な成長と社会全体の発展に貢献します。食品ロス対策は、もはや企業の社会的責任を超え、経営戦略の重要な要素として位置づけられつつあります。

4. 食品ロス対策を成功させるためのポイント

食品ロス対策は企業にとって重要な課題ですが、成功させるためには様々なポイントがあります。ここでは、効果的な食品ロス対策を実施するための主要なポイントについて詳しく解説します。

4.1 経営層のコミットメント

食品ロス対策を成功させるためには、まず経営層のコミットメントが不可欠です。トップダウンでの取り組みが、全社的な活動につながります。

4.1.1 経営方針への組み込み

食品ロス削減を企業の経営方針や中長期計画に明確に位置づけることが重要です。経営層が食品ロス削減の重要性を認識し、具体的な目標を設定することで、全社的な取り組みが促進されます。

4.1.2 リーダーシップの発揮

経営層自らが率先して食品ロス削減活動に参加し、その姿勢を社内外に示すことが効果的です。例えば、社内キャンペーンの先頭に立つことや、取引先との商談で食品ロス削減の重要性を訴えるなどの行動が挙げられます。

4.2 従業員教育と意識改革

食品ロス対策を全社的に推進するためには、従業員一人ひとりの意識改革と知識の向上が不可欠です。

4.2.1 継続的な研修プログラムの実施

食品ロスの現状や削減の重要性、具体的な対策方法などについて、定期的な研修を実施することが効果的です。消費者庁の食品ロス削減推進ページなどを参考に、最新の情報を盛り込んだ研修内容を作成しましょう。

4.2.2 社内コミュニケーションの活性化

食品ロス削減に関する情報や取り組み事例を社内で共有する仕組みを構築することが重要です。社内SNSやニュースレターなどを活用し、従業員間の情報交換を促進しましょう。

4.2.3 インセンティブ制度の導入

食品ロス削減に貢献した従業員や部署を表彰するなど、インセンティブ制度を導入することで、従業員のモチベーション向上につながります。

4.3 テクノロジーの活用

最新のテクノロジーを活用することで、効率的かつ効果的な食品ロス対策が可能になります。

4.3.1 AI需要予測システムの導入

AIを活用した需要予測システムを導入することで、より精度の高い発注や生産計画が可能になります。過去の販売データや気象情報、イベント情報などを総合的に分析し、最適な在庫量を維持することができます。

4.3.2 IoTセンサーによる在庫管理

IoTセンサーを活用した在庫管理システムを導入することで、リアルタイムでの在庫状況の把握が可能になります。温度管理が必要な食品の品質維持にも効果的です。

4.3.3 ブロックチェーン技術によるサプライチェーン管理

ブロックチェーン技術を活用することで、食品の生産から消費までのサプライチェーン全体を透明化し、効率的な管理が可能になります。三菱総合研究所のブロックチェーン技術を活用した食品情報プラットフォーム実証プロジェクトを参考に、導入を検討しましょう。

4.4 サプライチェーン全体での取り組み

食品ロス対策を効果的に進めるためには、自社だけでなくサプライチェーン全体での取り組みが重要です。

4.4.1 取引先との連携強化

原材料調達から販売までの各段階で、取引先との情報共有と連携を強化することが重要です。例えば、以下のような取り組みが効果的です。

• 原材料サプライヤーとの需要予測情報の共有
• 物流業者との配送効率化の検討
• 小売店との販売情報の共有と需要に応じた供給体制の構築

4.4.2 共同物流の推進

同業他社や異業種企業と共同で物流を行うことで、配送効率を高め、食品ロスの削減につながります。共同物流により、小ロット配送や多頻度配送が可能になり、在庫の最適化に貢献します。

4.4.3 フードバンクとの連携

販売できなくなった食品を、フードバンクを通じて必要としている人々に寄贈することで、食品ロスを削減しつつ社会貢献にもつながります。農林水産省のフードバンク活動の手引きを参考に、連携を検討しましょう。

4.5 データ分析と改善サイクルの確立

食品ロス対策の効果を最大化するためには、データ分析に基づく継続的な改善が不可欠です。

4.5.1 KPIの設定と管理

食品ロス削減に関する具体的なKPI（重要業績評価指標）を設定し、定期的に進捗を管理することが重要です。以下のような指標が考えられます。

KPI	内容
食品廃棄率	総食品取扱量に対する廃棄量の割合
在庫回転率	食品の在庫がどれだけ早く売れているかを示す指標
需要予測精度	予測値と実際の販売量の差異

4.5.2 定期的な分析と改善策の立案

設定したKPIに基づいて定期的にデータ分析を行い、問題点を洗い出し、改善策を立案することが重要です。PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善を実現しましょう。

4.5.3 ベストプラクティスの共有

成功事例や効果的な取り組みを社内で共有し、他部門や他店舗への展開を図ることで、全社的な食品ロス削減の効果を高めることができます。

以上のポイントを踏まえ、自社の状況に合わせた食品ロス対策を推進することで、効果的な取り組みが可能になります。経営層のリーダーシップのもと、全社一丸となって食品ロス削減に取り組むことが、持続可能な企業経営につながるのです。

5. 中小企業でも実践できる食品ロス対策

大企業だけでなく、中小企業も食品ロス対策に取り組むことが重要です。以下では、中小企業でも実践可能な具体的な対策を紹介します。

5.1 在庫管理の最適化

中小企業にとって、在庫管理の最適化は食品ロス削減の基本となります。以下の方法を組み合わせることで、効果的な在庫管理が可能になります。

5.1.1 需要予測の精度向上

過去の販売データや季節変動、イベント情報などを分析し、より正確な需要予測を行うことが重要です。中小企業向けの安価なAI需要予測ツールも登場しており、これらを活用することで予測精度を向上させることができます。

5.1.2 発注頻度の見直し

在庫を最小限に抑えるため、発注頻度を増やし、小口発注を心がけましょう。これにより、商品の鮮度維持にもつながります。

5.1.3 先入れ先出し（FIFO）の徹底

倉庫や店舗での商品管理において、先に入荷した商品から順に出荷・販売する「先入れ先出し」を徹底することで、賞味期限切れによる廃棄を防ぐことができます。

5.2 商品の見切り販売の実施

賞味期限が近づいた商品や傷みやすい生鮮食品の廃棄を減らすため、見切り販売を積極的に行いましょう。

5.2.1 価格設定の工夫

賞味期限までの残り日数や商品の状態に応じて、段階的に価格を下げていく方法が効果的です。例えば、以下のような価格設定が考えられます。

賞味期限までの残り日数	割引率
3日以上	10%オフ
2日	20%オフ
1日	30%オフ
当日	50%オフ

5.2.2 見切り品コーナーの設置

店舗内に見切り品専用コーナーを設置することで、お客様の注目を集め、購買を促進することができます。コーナーの場所や陳列方法を工夫し、見やすさと購買意欲を高めましょう。

5.2.3 見切り品の活用方法の提案

見切り品の活用方法をレシピカードやPOPで提案することで、お客様の購買意欲を高めることができます。例えば、傷みかけの野菜を使ったスープレシピなどを紹介するのも効果的です。

5.3 地域連携による食品ロス削減

中小企業が単独で取り組むだけでなく、地域の他の企業や団体と連携することで、より効果的な食品ロス対策が可能になります。

5.3.1 フードバンクとの連携

全国フードバンク推進協議会などのフードバンク団体と連携し、販売が難しくなった食品を寄付することで、食品ロスを削減しながら社会貢献にもつながります。

5.3.2 地域イベントでの活用

地域のお祭りやイベントで、賞味期限が近い食品を使用した料理を提供するなど、地域と連携した食品ロス削減の取り組みを行うことができます。

5.3.3 他業種との連携

例えば、飲食店と小売店が連携し、小売店で売れ残った食材を飲食店のメニューに活用するなど、異業種間の連携による食品ロス削減の取り組みも効果的です。

5.4 従業員教育と意識改革

中小企業において、従業員一人一人の意識改革が食品ロス削減の鍵となります。

5.4.1 定期的な研修の実施

食品ロスの現状や削減の重要性について、定期的に従業員向けの研修を実施しましょう。具体的な削減方法や成功事例を共有することで、従業員の意識向上につながります。

5.4.2 社内アイデアコンテストの開催

食品ロス削減のアイデアを従業員から募集し、優れたアイデアを実際に導入するなど、従業員の積極的な参加を促す取り組みも効果的です。

5.4.3 目標設定と進捗管理

食品ロス削減の具体的な数値目標を設定し、定期的に進捗を確認・共有することで、従業員のモチベーション維持につながります。

5.5 テクノロジーの活用

中小企業でも導入可能な、比較的低コストのテクノロジーソリューションを活用することで、効果的な食品ロス対策が可能になります。

5.5.1 スマートフォンアプリの活用

中小企業向けの低コストクラウド型在庫管理システムを導入することで、リアルタイムの在庫状況把握や適切な発注管理が可能になります。

5.5.2 クラウド型在庫管理システムの導入

中小企業向けの低コストなクラウド型在庫管理システムを導入することで、リアルタイムの在庫状況把握や適切な発注管理が可能になります。

5.5.3 IoTセンサーの活用

冷蔵庫や倉庫にIoTセンサーを設置し、温度や湿度を常時モニタリングすることで、食品の品質管理を徹底し、廃棄リスクを低減することができます。

5.6 商品開発と販売方法の工夫

中小企業ならではの機動力を活かし、食品ロス削減につながる商品開発や販売方法の工夫を行うことができます。

5.6.1 規格外品の活用

形や大きさが規格外の農産物を使用した加工食品の開発など、通常は廃棄されてしまう食材を有効活用する商品開発を行いましょう。

5.6.2 少量パッケージ商品の開発

単身世帯や少人数世帯向けに、少量パッケージの商品を開発することで、家庭での食品ロスを減らすことができます。

5.6.3 計り売りの導入

お客様が必要な分だけ購入できるよう、計り売りを導入することで、過剰購入による家庭での食品ロスを防ぐことができます。

以上のような対策を組み合わせることで、中小企業でも効果的な食品ロス対策を実践することが可能です。企業の規模に関わらず、食品ロス削減に向けた取り組みを積極的に推進することが、持続可能な社会の実現につながります。

6. 食品ロス対策に関する法律と支援制度

6.1 食品ロス削減推進法の概要

2019年5月に成立した食品ロス削減推進法は、食品ロス問題に対する国や地方自治体、事業者、消費者の責務を明確化し、食品ロス削減を推進するための法律です。

6.1.1 法律の主な内容

• 国や地方自治体による推進計画の策定
• 事業者の取り組み促進
• 消費者への啓発活動
• 未利用食品の活用促進

この法律により、企業は食品ロス削減に向けた取り組みを強化することが求められています。具体的には、需要予測の精度向上や賞味期限の延長、フードバンクとの連携などが推奨されています。

6.2 食品リサイクル法との関連

食品リサイクル法（食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律）は、食品廃棄物の発生抑制と再生利用を推進する法律で、食品ロス削減推進法と密接に関連しています。

6.2.1 食品リサイクル法の主要ポイント

• 食品関連事業者による食品廃棄物等の発生抑制
• 再生利用等の実施
• 定期的な報告義務
• 再生利用事業者の登録制度

企業は、食品リサイクル法に基づき、食品廃棄物の発生抑制と再生利用に取り組むことが求められています。具体的には、環境省の指針に従って、食品リサイクル率の向上や食品循環資源の再生利用等に努める必要があります。

6.3 企業向け支援制度と補助金

食品ロス対策に取り組む企業を支援するため、国や地方自治体はさまざまな制度や補助金を用意しています。

6.3.1 国の支援制度

制度名	概要	対象企業
食品ロス削減総合対策事業	食品ロス削減の取り組みに対する補助金	食品関連事業者
食品リサイクル推進事業	食品廃棄物の再生利用設備導入に対する補助金	食品製造業、外食産業等
食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業	食品製造過程の効率化による廃棄物削減のための設備導入支援	食品製造業

これらの支援制度を活用することで、企業は食品ロス対策に必要な設備投資や取り組みのコストを軽減することができます。詳細は農林水産省のウェブサイトで確認できます。

6.3.2 地方自治体の支援制度

各都道府県や市区町村も、独自の食品ロス対策支援制度を設けています。例えば、東京都では「食品ロス削減パートナーシップ会議」を設置し、企業と連携した取り組みを推進しています。

6.3.2.1 地方自治体の支援例

• 食品ロス削減に取り組む企業の認証制度
• フードバンク活動への助成金
• 食品ロス削減に関するセミナーや相談会の開催
• 消費者啓発キャンペーンへの協力企業募集

企業は、自社の所在地や事業内容に応じて、最適な支援制度を活用することが重要です。地方自治体の環境部門や産業振興部門に問い合わせることで、詳細な情報を得ることができます。

6.4 食品ロス対策に関する国際的な動向

食品ロス問題は世界的な課題であり、国連の持続可能な開発目標（SDGs）のターゲット12.3でも、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことが掲げられています。

6.4.1 諸外国の取り組み事例

• フランス：大型スーパーマーケットの食品廃棄禁止法
• イタリア：食品寄付を促進する善きサマリア人法
• 韓国：食品廃棄物の従量制課金システム

日本企業も、これらの国際的な動向を踏まえつつ、グローバルスタンダードに沿った食品ロス対策を推進することが求められています。国連食糧農業機関（FAO）のデータによると、世界の食料生産量の約3分の1が失われているか無駄になっており、日本企業の取り組みが世界的な課題解決に貢献する可能性は大きいと言えます。

6.5 食品ロス対策の今後の展望

食品ロス対策は、法制度の整備や支援制度の充実により、今後さらに加速していくことが予想されます。企業にとっては、これらの制度を活用しながら、自社の事業特性に合わせた効果的な対策を実施することが重要です。

6.5.1 今後の課題と展望

• デジタル技術を活用した需要予測の高度化
• サプライチェーン全体での情報共有と協力体制の構築
• 消費者の意識改革と行動変容の促進
• 食品ロス削減と食品安全の両立

企業は、これらの課題に対応しつつ、食品ロス対策を経営戦略の一環として位置づけ、持続可能な事業モデルの構築を目指すことが求められます。法律や支援制度を活用しながら、積極的に食品ロス削減に取り組むことで、企業の社会的責任を果たすとともに、競争力の向上にもつながるでしょう。

7. まとめ

食品ロス対策は、企業にとって重要な経営課題となっています。イオン、セブン＆アイ・ホールディングス、キユーピーなどの先進企業の取り組みから、食品ロス削減には経営層のコミットメント、従業員教育、テクノロジーの活用が不可欠であることがわかりました。

これらの対策により、コスト削減、環境負荷軽減、企業イメージ向上といった多面的な効果が期待できます。中小企業でも、在庫管理の最適化や地域連携など、実践可能な対策があります。また、食品ロス削減推進法や食品リサイクル法などの法的枠組みや支援制度を活用することで、より効果的な取り組みが可能です。

食品ロス対策は、企業の社会的責任を果たすだけでなく、持続可能な経営につながる重要な戦略といえるでしょう。