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サプライチェーンリスクとは?4つのリスクと管理ポイントを解説
目次
製品やサービスを安全に滞りなく消費者へ届けるには、サプライチェーンリスクを考える必要があります。サプライチェーンリスクとは、どのようなリスクを指すのでしょうか。
この記事では、サプライチェーンリスクの概要や対策、管理のポイントを解説します。記事を読んで理解し、サプライチェーンのセキュリティーレベルを強化しましょう。
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サプライチェーンリスクの重要性
サプライチェーンとは、製品・サービスが消費者に届くまでの供給プロセスです。製造業者や配送業者、販売業者など、さまざまな関連会社(サプライヤー)によって成り立ちます。
サプライチェーンリスクは、サプライチェーンを構成するどこかのプロセスで供給が止まるリスクです。一部のサプライヤーで業務が停滞・途絶すると、全体的な供給の流れが止まります。
自社も含めてサプライチェーンを構成するさまざまな企業に影響が出るため、企業の信用と利益に関わる重要な問題です。
サプライチェーンが影響を受ける4つのリスク
サプライチェーンが止まる要因は、1つではありません。サプライチェーンリスクは、環境的リスク、経済的リスク、地政学的リスク、技術的リスクの4種類に分類できます。ここでは、サプライチェーンが影響を受ける4つのリスクをそれぞれ理解しましょう。
自然災害に対するリスク
以下の事象でサプライチェーンに影響が出ることを環境的リスクといいます。
・エピデミックやパンデミック
・自然災害
・悪天候や気候変動
エピデミック・パンデミックの例として、2020年1月から日本国内でも流行した新型コロナウイルス感染症があります。世界的な拡大に伴い、各国が渡航制限や外出制限など、強力な措置を実行しました。
その結果、トラック運転手や港湾に関わる従業員の不足など、サプライチェーンの生産活動や物流活動に大きな影響を与えています。
2011年3月に発生した東日本大震災では、被災地域からサプライチェーンを通じて日本全国に製造業の停滞が生じました。例えば、電子部品が供給できず、自動車の国内生産が停止しています。
経済変動に対するリスク
経済的リスクとは、経済危機や原料の価格変動でサプライチェーンに影響が出ることです。経済的リスクには、以下の要因があります。
・重要な原材料・部品の不足
・サプライヤーの生産能力不足
・規制要件や規制の変更
具体的には、リーマンショックのような世界的な経済危機や原料の価格変動が該当します。リーマンショックにより、日本では多くの上場企業が倒産しました。
サプライチェーンを構成する1つの企業が倒産、または経営が悪化するだけで、一連のプロセスに大きな支障が生じます。
紛争など政治不安に対するリスク
政治的・軍事的な事象で生じるサプライチェーンリスクを、地政学的リスクといいます。地政学的リスクの内容は、以下の通りです。
・関税、貿易制限の不確実性
・戦争、テロ、社会的不安など
例えば、ウクライナ紛争により、ロシアは米国やEU(欧州連合)から経済的制裁を受けました。結果、ロシアからの燃料輸入に制限が生じ、価格が高騰しています。これに付随する形で、電気代も大幅に高騰しました。
地政学的リスクは、物理的な争いだけでなく、技術を巡る対立も含みます。重要・新興技術分野の優位を求める米中の覇権競争によって、中国産の原料に追加関税が課せられました。利益・販売シェアの低下といった影響が生じています。
サイバー攻撃などに対するリスク
サプライチェーンは、物流ネットワークや需要予測など、さまざまな技術で成り立ちます。そのため、以下の技術的リスクもサプライチェーンを考える上で重要です。
・サイバーセキュリティへの攻撃
・ロジスティックや輸送上の問題
例えば、サプライチェーンの中心を担う企業のセキュリティーが強固でも、子会社や取引先のセキュリティーレベルが低い場合もあります。
セキュリティーレベルの低い企業から不正アクセスすれば、サプライチェーンを介してターゲット組織にサイバー攻撃する「サプライチェーン攻撃」が可能です。侵入の段階で検知が難しく、気付かないうちに攻撃を受ける恐れがあります。
対策にはサプライチェーンリスクマネジメントが必要
サプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)とは、サプライチェーンで発生する4つのリスクを防ぐための取り組みです。サプライチェーン内の業務に関わる全ての企業やシステムを対象とします。方向性は「多元化」「可視化」「一元化」の3つで、それぞれの内容は以下の通りです。
多元化 | 材料調達の手段や生産の拠点を複数用意し、問題が起きても事業が継続できる体制にする。 |
可視化 | 以下の3つの可視化により、リスクマネジメントの効率化と復旧力の向上につなげる。 ・サプライチェーン構造 ・サプライチェーン上のリスク ・サプライチェーンに影響を与える事象 |
一元化 | サプライチェーンを構成するサプライヤーが連携して、リスクマネジメントに取り組む。 |
サプライチェーンリスクを回避する4つの管理ポイント
サプライチェーンリスクマネジメントの対象は多く、実現するのは容易ではありません。安定的なサプライチェーン構築は、重要なポイントを押さえた上で取り組むことが大切です。ここでは、サプライチェーンリスクを回避する4つの管理ポイントを紹介します。
全体のセキュリティー水準を保つ
まずは、自社のセキュリティーを強化する必要があります。重要なのは、特定の人員に任せるのではなく、企業全体でセキュリティー強化に取り組むことです。専門業者に委託する場合は契約書を作成し、守秘義務やトラブル時の負担割合を明記しましょう。
具体的な対策として、本社のパソコン・サーバーへのアクセス制限やウイルス対策ソフト・不正アクセス検知システムの導入があります。
サイバー攻撃に対するセキュリティーだけでなく、人的(操作ミスや内部不正)、物理的(不正侵入や盗難)セキュリティーも重要です。複数人による相互監視体制や情報リテラシー研修、監視カメラの設置、警備室の運用を取り入れるとよいでしょう。
日常管理の強化
自社のセキュリティーを強化するだけでは、サプライチェーンリスクを回避できません。サプライチェーンリスクを回避するには、サプライヤーと連携して日常管理を徹底しましょう。
他社のセキュリティーレベルが自社と同等とは限らないため、サプライヤーの担当者にヒアリングしながらセキュリティー体制の見直しを提案するとよいでしょう。
今後提携する企業を選定するときは、セキュリティー水準が重要です。以下の認定を取得した企業は、セキュリティー水準の高い企業と判断できます。
・ISMS認証:情報セキュリティーに関する要件を満たした企業が取得できる国際規格
・プライバシーマーク:個人情報保護の適切な管理体制を整備する企業が取得できる認証
サプライチェーンの見直し
サプライチェーンリスクを回避するには、現状の見直しも必要です。特に原材料の調達先・生産拠点が1つしかない場合、自然災害のような被害が起きると、全体が止まってしまいます。
調達先・生産拠点を複数用意すれば、被害があっても他で代用が可能です。サプライチェーンを国外にも広げている場合、複数の国に拠点を設置するとよいでしょう。
より小規模な対策として、テレワークも有効です。台風などで従業員が出勤できない場合も業務を継続できます。
BCPの方針を決める
BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)とは、自然災害やサイバー攻撃といった緊急事態が起きたときの具体的な行動をまとめた計画です。事業資産の損害を最小限に抑えながら、重要な業務の継続と事業の早期復旧を図る目的で策定します。
サプライチェーンリスクを回避するために重要なのは、BCPを策定するだけでなく、サプライチェーンを構成する企業と従業員に認識を広めることです。策定した後も現状の変化に応じて継続的に改善しましょう。
サプライチェーンリスク管理(SCRM)フロー
サプライチェーンリスク管理は、しっかりと段階を踏むことで最適なリスク管理につながります。ここでは、サプライチェーンリスク管理(SCRM)フローを紹介します。大きく分けると、手順は3つです。それぞれの内容や注意点を理解しましょう。
リスク策定と評価分析
まずは、サプライチェーンの特性や現状を把握しましょう。さまざまな部門との連携が必要なため、推進体制を見直して構築します。このとき重要なのが、経営層の承認と参加です。
サプライチェーンリスク管理は、サプライチェーンの効率や利益向上に直結する取り組みではないことを理由に、経営層からの支援を得られない場合があります。サプライチェーンリスク管理の目的を十分に理解してもらいましょう。
次に、サプライチェーンの構造を分析し、リスクを特定します。リスクが発生する頻度や確率から、改善の必要性を評価します。
リスク戦略を決める
特定したリスクや課題に対し、サプライチェーンを継続するための対応策を決めます。リスク対応の優先順位を付け、具体的な実施・管理方法を選択しましょう。
BCPを改善するのは、このタイミングです。選択肢として、サプライチェーンの上流または下流に位置するサプライヤーのBCPを改善する方法の他、自社のBCPを中心に改善する方法があります。関係者と協議しながら進めましょう。
優先順位は、リスクの発生頻度・可能性と対象範囲が判断基準です。2つを軸にサプライチェーンリスクマップを作成することで可視化できます。
監視・実行・改善
対象のサプライチェーンリスクを監視し、急激な変動や日常範囲からの逸脱を検知します。検知したリスクを社内でスピーディーに伝達し、行動できる体制を構築しましょう。
サプライチェーン全体に広がる前に影響を食い止める必要があるため、リスクの監視と検知は非常に重要です。特定していなかったリスクで影響の大きいものがあれば記録し、優先順位の変更やBCP見直しといった改善を行います。
自然災害時の対策はサプライヤーと合同で模擬訓練を行うことで、サプライチェーンリスクの知識・対応能力を習得できます。
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まとめ
サプライチェーンリスクとは、一部のサプライヤーが停滞・途絶することで一連の供給プロセスが止まるリスクです。自然災害や経済変動といった多様なリスクが要因となるため、適切なフローでサプライチェーンリスクマネジメントを実施する必要があります。
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