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変形労働時間制でシフト変更は原則不可!初手から間違えないシフトを作るには
目次
変形労働時間制は一定期間の労働時間を比較的自由に調節できる制度ですが、一度決めたシフトは原則的に変更できません。しかし、現場ではシフト変更が必要と判断するシーンもあるでしょう。
そこでこの記事では、変形労働時間制でシフト変更が認められるケースと、労働基準法に違反しないシフト作成のポイントを解説します。
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変形労働時間制のシフトとは
変形労働時間制は、従業員の労働時間を従来の固定された勤務時間から柔軟に変動させる制度のことを指します。従業員の労働時間を「1週間」「1か月」「1年」といった一定の期間内で配分し、労働生産性の向上を図ることが目的です。
変形労働時間制を主に採用しているのは、繁忙期と閑散期との差が大きい業界・業種です。「忙しいときはできるだけ長く働き、そうでないときは無理せず短時間で退勤する」といった働き方が可能になるためです。
なお労働基準法では、1日8時間、週に40時間と法定労働時間が定められています。法定労働時間を超える場合は残業扱いとなり、割増賃金を支払う決まりです。しかし変形労働時間制のシフトであれば、所定労働時間を1日10時間と定めた日に10時間勤務しても、割増賃金は発生しません。
(参考:『変形労働時間制』)
(参考:『週40時間労働制の実現 1ヵ月又は1年単位の変形労働時間制』)
変形労働時間制のシフト変更は原則不可だが例外はある
従業員の急な欠勤や会社の都合などでシフトを変更したいケースもあるでしょう。しかし、変形労働時間制の下では、従業員に明示したシフトを後から変更することは「原則」認められていません。あくまで「原則」なので、正当な理由がある場合は別です。以下で詳しく解説します。
(参考:『1か月単位の変形労働時間制』)
正当な理由があれば変更してよい
地震や台風などの天変地異、業務に使う機械の故障、従業員の事故・怪我など、予定した業務に大きな影響がある場合はシフトの変更が認められる場合があります。
とはいえ「正当な理由」の明確な定義はないため、具体的にどのようなケースが認められるのかは定かではありません。よほどの理由がない限り、変形労働時間制のシフト変更は避けるべきでしょう。
労働者の不利益にならなければ変更してよい
シフトの変更によって労働者にとって不利益が生じる場合があります。「労働者の不利益」の判断は労働者側に委ねられる部分がありますが、代表例のひとつは「労働時間が削られ報酬が減った」です。
たとえシフト変更の理由に合理性があっても、判断基準は労働者側にあります。従業員にとって利益になる、あるいは不利益になるとまではいえない場合、シフトの変更を打診してみてもよいでしょう。
変形労働時間制でシフト変更する際の注意点
やむを得ない事情により変形労働時間制のシフト変更をする際は、いくつか注意すべき点があります。会社側の強引なシフト変更は労働者の権利を阻害するだけでなく、法律違反になる可能性もあります。ここで紹介する5つの注意点を押さえておきましょう。
会社の身勝手な都合でシフト変更しない
「お客さんが減ってきているからやっぱりシフトを削ろう」「明日は仕事を早く片付けたいからシフトを手厚しよう」など、雇用側の都合でシフトを変更してはいけません。
たとえ売り上げが厳しくても、人件費が逼迫していても、従業員の権利や都合を優先してください。身勝手なシフト変更は従業員との信頼関係を壊すきっかけにもなります。
労働基準法や就業規則を守る
シフト変更に際しては、労働基準法や就業規則の規定の遵守が絶対です。労働時間制限や休息時間の確保、残業の制限など、法律や就業規則に明記されている労働条件を守りましょう。
労働基準法や就業規則の違反は、労使間の紛争や労働者からの申し立て、労働基準監督署からの調査など、法的なリスクを伴います。法的な制裁を受ける可能性があり、企業の評判や信頼性にも悪影響を及ぼすでしょう。
労使間で相談して同意を得る
どうしてもシフト変更をせざるを得ない場合は、従業員に相談しましょう。「無断でシフトを変更する」「半ば強制的に出社させる」といった行為は認められていません。
従業員の権利はもちろん、意見や要望を尊重し、きちんとした協議を通じて「シフトを変更してもよい」という同意を得ましょう。変更後のシフトは早めに共有することも大切です。
シフト変更の履歴を残しておく
シフト変更に関連するトラブルが発生し、訴訟に至るケースもあります。そのため、いつでもシフトの変更の履歴を追えるようにしておくことが大切です。何らかのトラブルが発生したとき、変更履歴があるのとないのとでは大きな違いです。従業員の訴えで法的な争いにまで発展した場合、シフト変更の詳細な履歴が重要な証拠となります。
また、労働基準監督署や労働審判所による調査・審査が行われた際には、シフト変更の履歴の提出が求められる場合もあります。
時間外労働になれば割増賃金が発生する
変形労働時間制でも、所定労働時間や法定労働時間を超えた場合には割増賃金が発生します。以下は具体例です。
・会社の定めた1日の所定労働時間が1日8時間
・実労働時間が10時間
→法定労働時間である1日8時間を超えた時間(2時間)が時間外労働となり、割増賃金が発生
・会社の定めた1日の所定労働時間が9時間
・実労働時間が12時間
→所定労働時間の9時間を超えた時間(3時間)が時間外労働となり割増賃金が発生
(参考:『1か月単位の変形労働時間制』)
変形労働時間制のシフトルールを変更して問題となった事例
雇用側の都合で変形労働時間制のシフトルールを変更し、提訴されて裁判になった事例を紹介します。
【前提】
・飲食業界を営む企業Aは、1か月変形労働時間制を採用していた
・アルバイト従業員のほとんどが学生であり、1か月先の予定を組みにくい状況だった
【トラブルとなる行動】
・企業Aは、毎月1日と16日頃にアルバイト従業員にシフトの希望日を確認し、2週間単位で勤務シフト表を作成していた
・1か月変形労働時間制の有効性を争い、アルバイト従業員が提訴
【結果】
・裁判所は企業Aの1か月変形労働時間制の適用を無効と判断・残業代の支払いを命じた
このように、「シフトが組みにくい」といった雇用側の事情があっても、法律上のルールは守らなければなりません。
変形労働時間制のシフト表を正しく作るには
変形労働時間制のシフトは後から変更の必要がないように、あらゆる要素を考慮して慎重に作成することが大事です。しかし、シフト表の作成に慣れていないと、どの部分に気をつけたらよいのか分からないでしょう。ここでは、変形労働時間制のシフト表を正しく作るポイントを5つ紹介します。
法令の理解と遵守は大前提
前述した判例のように、変形労働時間制のルールを誤解すれば裁判沙汰になってしまい、企業の評判や信頼を落としてしまいます。シフト作成者は労働基準法に関する知識を持ち、きちんと理解した上で遵守することが不可欠です。
とはいえ、法律の条文は難解な言葉で書かれていることが多く、素人が全てを理解するのは簡単ではないでしょう。理解が及ばない場合は、法務部や弁護士へ相談するか、リーガルチェックをしてもらうことも選択肢に入れてみてください。
自社に合った期間の変形労働時間制を採用すること
変形労働時間制には「1週間単位の非定型的変形労働時間制」「1か月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」「フレックスタイム制」の4つがあります。
こまめにシフトを変更したいのであれば、1週間や1か月のような短い期間を選択する必要があるでしょう。とはいえ、自社の業態や従業員の属性、労働環境などを考慮して決めることも大切です。また、各期間によって要件や規定も異なります。しっかりと確認してください。
(参考:『変形労働時間制』)
適用対象者の労働時間は適切か
変形労働時間制の対象者が期間中にどのくらいの日数や時間を働けるのか、上限を把握しておきましょう。
対象期間が1か月の場合、1週間の法定労働時間(40時間)×(変形期間の日数÷7日)で上限時間が算出できます。変形期間が4週間(28日)であれば、40時間×(28日÷7日)で、160時間です。すなわち、変形期間中の法定労働時間は160時間となります。
(参考:『1 1か月単位の変形労働時間制の採用方法 2 労使協定または就業規則などに定める事項』)
シフト表の組み合わせを複数パターン検証する
シフト表を作成する際に、複数パターンを作ることもおすすめです。手間や時間はかかりますが、各シフトのパターンをシミュレーションし、労働力の均等な配置や効率的な勤務体制が実現可能かを評価できます。
最適なシフトパターンを比較検証し、選択することで、後から「シフト変更が必要になった……」と頭を抱えるリスクを軽減できるでしょう。
勤怠管理システムを活用する
変形労働時間制は固定労働時間制と比べ、従業員の所定労働時間や法定労働時間を考慮したシフトの作成が困難です。表計算ソフトを駆使すれば作業負担を軽減できますが、手作業には変わりなく、ヒューマンエラーが起こるリスクもあります。
そこで一案なのが、勤怠管理システムに備わっているシフト作成・管理機能です。シフト作成機能では、従業員の希望や過去の勤務実績を基に、システムが最適なシフトを提案してくれます。
勤怠管理システムを活用することで、労働時間の把握と管理が容易になるのもメリットです。稼働時間や残業時間、休日出勤などを適切に把握し、労働基準法や労働契約に基づいた労働時間の遵守が可能になります。給与計算システムとも連携させれば、給与計算も自動化できます。
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人為的なミスを起こさないために、また従業員とのトラブルを軽減するためにも、ぜひHRBESTの利用をご検討ください。
まとめ
変形労働時間制は従業員の労働時間を柔軟に調節できる制度です。しかし、一度決めたシフトは原則的に変更できないため、シフトを作成する際には慎重に計画・作成する必要があります。
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