BUSINESS
売上予測とは?立て方や精度を上げる計算方法を学び、データを使ってレポートを作成しよう
目次
売上予測は、企業の経営に関わる事業計画に重要な役割を果たします。精度の高い売上予測には、必要なデータの収集と正しい計算方法による算出が必要です。しかし、売上予測の計算方法や必要なデータが分からない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、売上予測の計算方法や作成のメリット、使えるツールを紹介します。正確な売上予測で月間・年間レポートが作成できれば、事業計画の立案や経営判断に役立つでしょう。
売上予測に必要な基本知識
売上予測は、企業の経営判断に欠かせない重要な指標です。売上予測を基に事業計画を立案するため、綿密な計画には精度の高い数値が必要です。
ここでは、売上予測と売上目標との違いを解説します。
売上予測とは
売上予測とは、あらかじめ決めた期間の売上を予測するものです。売上実績、月間・年間成長率、外的要因、市場動向などのデータから導き出します。
期間は、ベンチャー企業なら1年目の月次と3年間の年次計画、中小企業は3年間の年次計画、大企業は短期なら1年〜2年、長期なら3年〜5年が目安です。
高精度な売上予測ほど経営判断がしやすくなり、利益の拡大につながるでしょう。
売上目標との違い
売上目標は、「このくらい売り上げたい」「この程度の売上になる」といった期待や予想を含む目安値です。売上目標を立てれば、企業全体のモチベーションや利益率の向上が見込めます。
一方、売上予測は過去のデータを用いて計算した現実的に達成できる数値です。したがって、過去の売上データを参考に導き出した値でも、計算方法が異なれば、売上予測ではなく売上目標です。
売上予測の重要性
売上予測は、企業が未来の市場動向を読み解き、それに応じて戦略を立てる上で欠かせません。なぜなら、生産計画、在庫管理、人材の配置、資金調達といった重要な意思決定を、より精密に行えるからです。
具体的には、市場の需要変動を先読みし、過剰在庫や品切れを避け、顧客満足度を高めることが可能になります。また、売上予測は経営資源の最適化を可能にし、コスト削減、利益の最大化を実現します。
信頼性の高いデータに基づく客観的な予測は、属人的な判断を減らし、経営の効率化を促進するでしょう。これらのプロセスを通じて、企業は競争優位性を確立し、持続可能な成長を目指すことができるのです。
売上予測は難しい?
売上予測を立てるには、データの収集と入力が必要です。収集・入力したデータが正しくない場合、精度の低い予測値や目標値しか作成できません。
ここでは、売上予測がうまくいかない理由と併せて、正確に計算できない場合に起こる問題を紹介します。
売上予測に関する企業の悩み
売上予測は、営業部署の管理職が行うのが一般的です。
組織管理に加え自らも営業に出る場合、多忙で綿密な売上予測ができないケースや、過去の経験から勘で予測値を出しているケースもあります。感覚的な数値では正しい経営判断が下せません。
また、データをきちんと記録していない場合も正確な売上予測は算出できないでしょう。「記録していない日がある」「大ざっぱな記録しかない」となると、期待値を込めた売上予測に頼らざるを得ない状況になります。
売上予測を軽視するとどうなる?
データを用いた売上予測でも、正確に計算ができていないとさまざまな問題が生じます。
企業は、売上予測の数値に基づいて今後の事業計画を立てます。正確に計算していなければ、在庫管理や予算管理、人員配置、資金繰りなどが曖昧になりかねません。
在庫管理が正しくできていない場合、在庫の過不足が生まれます。予算管理が正しくできていないと、人件費や広告費などの予算が立てられません。資金繰りに関しては、正しく計画しなければ経営危機に陥る恐れがあります。
このような問題を避けるためにも、売上予測は正確に作成・計算しましょう。
売上予測を作成するメリット
売上予測の作成で、業務をより効率的に遂行し、最適な運営が可能になります。過去のデータを分析して正確な売上予測を立てることは、企業の経営や店舗の運営にとって大きなメリットです。
ここでは、特に代表的なメリットを4つ挙げて紹介します。
最適な人員配置ができる
営業活動に必要な従業員数は、売上に応じて変動します。予測値が売上よりも上回れば増員、下回れば人員調整が必要です。業務に対して人員が多過ぎる場合、人件費が無駄になる恐れがあります。
また、売上拡大のための増員や、新店舗への従業員配置にも売上予測が役立ちます。正確な売上予測を算出すれば、状況に応じた人員配置が可能です。売上予測の作成は、離職率の低下や人件費の見直しにもつながるでしょう。
適切な在庫管理ができる
在庫管理は、製造業や小売業にとって必要不可欠な業務です。売上によって必要な商品数が変動するため、売上予測は重要な目安です。精度の高い売上予測を作成すれば、材料や生産量、確保する商品数を最適化できます。
正確な売上予測が作成できていない場合、商品の欠品による販売機会の損失、過剰在庫による保管・廃棄コストの増大などのリスクが高まります。リスクを回避し、在庫管理を適正化できることもメリットです。
予算の管理ができる
企業では、売上予測に基づいて広告費や設備費、福利厚生費などの予算を配分するのが一般的です。月別に売上予測を作成すれば、市場動向や外的要因に合わせて費用対効果の高い部分に予算を振り分けられるでしょう。
予測通りに事業が進めば問題ありませんが、予算の立て直しが必要になることもあります。プロジェクトの遂行にも、売上予測の作成が役立ちます。
事業計画に役立つ
事業計画の策定に、売上予測は必要不可欠です。売上予測を作成しないままの資金投入は、資金繰りの悪化を招くリスクがあります。
事業拡大や設備投資のために借り入れをする場合、数年先を見越した事業計画が必要です。高い精度の売上予測があれば、数値に基づいた返済計画が立てられるため、大きなメリットとなるでしょう。
売上予測の計算にはどのようなデータが必要?
正確性の高いデータを豊富に収集できれば、精度の高い売上予測が作成できます。事業内容によって必要なデータは異なりますが、基本的には以下のデータが必要です。
・顧客がサービスに興味を持つまでの期間
・案件化してから受注するまでのリードタイム
・リードから受注の進捗率(コンバージョン)
・月別の売上
・商品別の売上
・契約期間
・更新率/解約率
上記の過去データ以外にも、市場動向・季節・イベントなどの外的要因のデータも必要です。
データ数が多いほど精度は高まりますが、曖昧な数値のデータを使用すると予測精度が下がります。使用するデータは適宜調整しましょう。
売上予測の立てるための5ステップ
実際に売上予測を立てるにはどうすればよいのでしょうか。ここでは5つのステップに分けて解説します。
Step1:ビジネスデータの追跡
売上予測の精度を高めるためには、過去のビジネスデータのトレースが不可欠です。このデータには、月別の販売数や製品ごとの売上高、返品やキャンセルされた製品の数などが含まれ、これら全てが予測のベースとなります。
さらに、ビジネスの成長率、セールスチームの規模、販売サイクルの平均期間など、追加的な指標も重要です。これらのデータを集約し分析することで、企業は将来の売上動向をより正確に予測できるようになるでしょう。
特に、CRMの利用は、データの収集と分析を効率化し、売上予測のプロセスを大幅に改善することができます。CRMを活用することで、売上データをリアルタイムで追跡し、これらの情報を基に売上の予測値を計算し、季節性などの外部要因を考慮した調整が可能になります。このようなシステマティックなアプローチにより、企業は市場の変動に迅速に対応し、戦略的な意思決定を行うことが可能となるのです。
Step2:指標の設定
売上予測を立てる際に指標を設定することは、予測の方向性を定め、具体的な目標を設ける基礎となります。このプロセスでは、どの製品やサービスに焦点を当てるのか、どれだけの期間を見越して予測を立てるのか、そして製品の価格設定や評価方法を明確に定義することが求められます。例えば、製品ごとの単価や会員数などの指標を設定することにより、収益を単位当たりで計算し、より正確な売上の見通しを立てることが可能になります。
さらに、販売サイクルの長さを把握することで、セールスプロセスを理解し、それぞれのステージでどれくらいの時間がかかるかを予測できるようになるでしょう。これにより、企業は販売戦略を最適化し、売上を最大化する機会を見出すことが可能です。
特に、過去のデータが不足している新興企業や新製品の場合、類似の市場データや業界平均を参考にすることで、より現実的な売上予測を立てられます。このように、明確な指標を設定し、それに基づいて売上予測を行うことで、企業は未来のビジネス展開に向けた戦略的な計画を練ることが可能になり、競争力を強化できるのです。
Step3:予測方法の選択
売上を予測する際、基本的にはトップダウン方式とボトムアップ方式の二つのアプローチがあります。
トップダウン方式は市場全体の規模を基に、自社がどの程度の市場シェアを獲得できるかを推定する方法です。これは新規事業や市場データが限られている場合に有効です。
一方、ボトムアップ方式は、自社の販売データやセールス担当者の数など、具体的なビジネスデータから売上を予測するアプローチであり、既存のビジネスや季節性に左右される事業、将来の予算計画を精緻に立てたい場合に適しています。
どの予測方法を選択するかは、ビジネスの性質、利用可能なデータの量と質、予測したい期間など、様々な要因によって異なります。最適な方法を選ぶことで、より現実的で信頼性の高い売上予測を立てることが可能になり、経営戦略の精度と効果を大きく向上させることができるのです。
Step4:売上予測値の算出
売上予測値の算出は、企業が将来の収益性を把握し、適切な戦略を立案する上で欠かせないプロセスです。
算出の仕方はさまざまで、例えば現在までの実績から月平均の売上を計算し、これを基に年間の売上予測を立てることが挙げられます。この方法は、特に年度途中で将来の売上を見積もりたい場合に有効でしょう。例えば、3月までの売上データがある場合、これを用いて月平均売上を算出し、残りの月数に掛け合わせることで、年末までの売上予測を得ることができます。
また、前年度のデータを活用し、年間の成長率や季節性の変動を考慮に入れることも、より精度の高い予測には不可欠です。これにより、特定の月や四半期での売上の変動を反映させ、売上予測の精度を向上させられます。
Step5:外部要因の調整
売上予測を立てる上で、外部要因の調整は予測の正確性に大きな影響を与えます。そのため、過去のデータや成長率だけではなく、インフレ率、市場競争、市場や業界の変化、法律の変更、季節変動など、様々な外的要因を考慮に入れる必要があるでしょう。
これらの要因は、企業では直接コントロールできませんが、売上に直接的または間接的に影響を与えます。例えば、インフレ率の上昇は価格戦略に影響を与え、競争の激化は市場シェアを変動させる可能性があります。また、技術の進歩や法律の改正は、製品の需要や販売方法に大きな変化をもたらすことがあります。季節変動を考慮することで、特定の時期の売上ピークや低迷を正確に予測することが可能になります。
これらの要因を適切に分析し、予測に反映させることで、より現実に近い売上予測を立て、計画を精緻に策定することができるのです。
月間・年間データを使用した売上予測の計算方法
実際、売上予測の計算をするにはどのような手法があるのでしょうか。ここでは、大きく2つの方法について解説します。
売上履歴で計算する
売上予測を売上履歴から計算する場合、年間予測では過去2年分、月間予測では過去2か月分のデータを用います。計算式は以下の通りです。
売上予測=昨年(先月)の売上利益データ×年間(月間)平均成長率
例えば、一昨年の売上が1,000万円、昨年の売上が1,200万円の場合、平均年間成長率は20%です。これを計算式に当てはめると、今年の売上予測は1,440万円です。
売上予測=1,200万円×1.2(20%アップ)=1,440万円
契約や更新が必要な商品の場合、解約する金額を差し引き、更新する契約を追加することで、さらに精度の高い売上予測値を計算できます。
営業データで計算する
営業データで売上予測を計算する場合、必要なのはアポイントの獲得、商談、提案、見積もり、受注までのプロセスにおける実績数値です。営業データを用いる場合の計算式は以下の通りです。
売上予測=商品価格×受注見込み数
以下の条件で計算してみましょう。
訪問者数:160人
商品の価格:10万円
商談、提案、見積もり、受注の4つのプロセスに進む顧客の割合:各50%
受注見込み数は、訪問者数に各プロセスの割合をかけて算出します。以下の計算の結果、売上予測値は100万円です。
受注見込み数=160×0.5×0.5×0.5×0.5=10件
売上予測=10万×10件=100万
売上予測の計算に使えるツール
売上予測を計算するには、ツールの活用が最適です。膨大なデータを予測に用いる場合、自分で計算してレポートを作成するには時間がかかります。計算ミスにより、正確な予測値が算出できない場合もあるでしょう。
ここでは、売上予測の計算が簡単にできるツールを紹介します。
SFA
SFAは、Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)の略です。日報・商談などの活動記録、顧客や案件の記録と管理ができる営業支援ツールです。
大半のSFAツールは売上予測レポートを付帯しており、必要なデータを取り込めば自動で集計します。重複入力や転記ミスがなくなることで、業務効率の向上も期待できます。
また、売上予測のデータはグラフや表でも生成されるため、視覚的なデータ管理が可能です。情報共有がしやすく、営業活動の現状がタイムリーに把握できるのも魅力です。
Excel
Excelを利用した売上予測も可能です。すでに利用している場合は導入コストがかりません。レポートを作る手間はかかりますが、予測シート機能やトレンド関数を利用すれば、数値を更新するだけで計算できます。クラウド版のExcelであれば、シートの共有も可能です。
ただし、Excelはデータ管理ツールではないため、データ量が膨大になるとパフォーマンスの低下やデータ破損のリスクがあります。中長期的に売上予測を計算・管理するのであれば、データ管理・分析や売上予測ができるツールの利用がおすすめです。
売上予測の精度を高めるポイント
精度の高い売上予測を算出できれば、より綿密な事業計画の立案や経営判断が可能です。季節やイベントなどの外的要因にも対応しやすくなります。売上予測の精度を高める方法として以下の3点が有効です。
1, コスト意識を持つ社員1人ひとりが強く持つ
売上予測の精度を高めるためには、チーム全体がコスト意識を持つことが不可欠です。各メンバーがコストに対する理解と意識を深めることで、無駄な支出の削減や、無計画な値引きの回避が可能となります。
チーム一丸となってコストを意識する文化を育むことは、売上予測の精度を向上させるだけでなく、企業全体の収益性の向上にも寄与します。個々のメンバーがコストに関する責任を持ち、それを日々の業務に反映させることで、企業の将来は大きく変わるでしょう。
2, 売上予測を立てるなら数ヶ月先も視野に
売上予測を数か月先、さらには1年先まで見据えることは、企業にとって欠かせない取り組みです。市場の変動性、季節性、さらには経済全体の動向を理解し、これらの要因を緻密に予測モデルに組み込むことで、単に短期的な売上動向を捉えるのではなく、長期的なビジョンのもとに堅実な事業計画や予算策定が可能になります。
また、数か月先の市場変動やトレンドの変化をあらかじめ予測しておくことで、それに応じたマーケティング戦略の見直しや製品開発への対応もスムーズに実施できます。生産計画の調整、在庫管理の最適化といった対策を講じることで、不要なコストを削減し、利益を最大化します。
売上が伸びる時期を予測することは、経営資源の適切なアロケーションにもつながり、競争優位性を高める効果が期待できるでしょう。
3, ツールを積極的に活用する
売上予測の精度を高めるためには、ツールの活用が不可欠です。特にSFAのようなツールは、営業活動におけるデータの収集・分析を効率化し、より精度の高い予測を可能にします。
これらのシステムは、営業の行動管理や進捗状況のトレースに加え、過去の商談結果や市場動向のデータから、将来の売上を予測するためのインサイトを提供します。さらに、AI技術を活用した自動化機能を備えたツールも登場しており、これにより営業チームは手間のかかる案件管理業務を効率的に行いながら、売上予測の精度を向上させることができます。
ツールの活用はデータに基づく合理的な判断が可能となり、企業の成長をより加速させるでしょう。
UMWELTはデータ管理にも最適!売上予測レポートを作成しよう
過去データを収集・蓄積し、売上予測を計算するには、ツールの利用がおすすめです。AIやRPAなどの自動化ツールを搭載するプラットフォームなら、売上予測に必要なデータの収集や管理にも役立ちます。
ここでは、データ管理と売上予測ができるTRYETINGの『UMWELT』を紹介します。
データ管理や業務の自動化に役立つ
UMWELTは、ExcelやGoogleスプレッドシートなどのCSVデータの結合や変換・取得をRPAで自動処理できます。売上予測に必要なデータを収集し、CRMによる分析やレポートの作成も可能です。
また、豊富なアルゴリズムを搭載しているため、精度の高い在庫管理や需要予測もできます。在庫管理データを用いた商品の自動発注、必要な人員に合わせた自動シフト作成も可能です。ノーコード予測AIのため、専門的な知識がなくても導入できます。
UMWELTの導入事例
オルビス株式会社様は、化粧品や栄養補助食品などの企画・開発と販売を行う企業です。市場環境の変化で複雑化・深刻化する需要予測や在庫管理を最適化するために、UMWELTを導入しました。
UMWELTは、以前のシステムでは対応できなかったBtoB商材の需要予測を実現しています。通販や店舗の在庫補充にも活用しており、AIプログラミングなしで精度の高い結果を出しました。
(参考: 『【オルビス様】UMWELT活用事例|市場の変化で複雑化するサプライチェーンマネジメントに対応|TRYETING』)
まとめ
売上予測の計算方法を理解すれば、企業の事業計画の立案や経営判断がスムーズにできます。膨大な量のデータを収集・分析し、計算するには手間と時間がかかります。効率良く精度の高い売上予測を出すには、ツールの導入がおすすめです。
UMWELTは、AIを活用したデータ収集・分析・管理や精度の高い需要予測・在庫管理ができるプラットフォームです。ノーコード予測AIのため、専門的な知識がなくても導入できます。お気軽にご相談ください。
UMWELTのサービスページをチェックする
TRYETING
公式
TRYETING公式です。
お知らせやIR情報などを発信します。