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売れ残りを削減するには?企業の取り組み事例や在庫対策を解説
目次
企業にとって、売れ残りは無駄なコストと利益の損失を意味します。しかし、どのような方法で売れ残りを削減すればよいのでしょうか。
この記事では、売れ残りの対処法や売れ残りが発生する原因、企業の取り組み事例を紹介します。最後まで読めば、在庫を適正化し自社の生産性を向上できるしょう。
売れ残りや廃棄で起こる深刻な問題とは?
商品・製品の売れ残りや廃棄は、企業だけでなく社会全体に影響を及ぼす問題です。近年、社会的に売れ残りを懸念する意識が高まっています。
特に売れ残りが深刻な分野は「食品」と「衣類」です。ここでは、食品ロスや衣類ロスの現状と、売れ残りに対する社会的な取り組みを理解しましょう。
事業者も消費者も食品ロスや衣類ロスが深刻に
食品ロスは食べられる状態で廃棄する食品、衣類ロスは着用できる状態で廃棄する衣類です。家庭でも事業活動でも大量のロスが発生しており、近年深刻化しています。
環境省によると、2021年度の食品ロス発生量は約523万トン(家庭系:約244万トン、事業系:約279万トン)です。
一方の衣類ロス発生量(2020年度)は約51万トンで、消費者が手放す量の約65%が廃棄処分となっています。
食品ロス・衣類ロスは、多額のコストや環境負荷につながる問題のため、家庭と企業の双方で積極的に取り組む必要があります。
売れ残りなどの削減を推進する法を制定
食品ロスは世界的な問題であり、SDGs(持続可能な開発目標)の目標12に該当します。政府は食品ロスの削減を推進するために「食品ロス削減推進法」や「食品リサイクル法」を制定しました。
社会的な責任を果たす意味でも、企業は売れ残りの削減に取り組む必要があります。事業系食品ロスの目標は、2030年度までに2000年度比で食品ロス量を半減(約273万トンを削減)することです。
具体的には、バリューチェーン全体の見直しや賞味期限の延長を促進しています。
フランスでは世界初「衣類廃棄禁止法」が施行
大量生産・大量廃棄による環境負荷を危惧して、フランスでは世界で初めて「衣類廃棄禁止法」を施行しています。
これは、売れ残り衣類の焼却、埋め立て処分を禁止する法律です。リサイクルや寄付による処理を義務付けており、違反した場合は罰金を支払う必要があります。
スウェーデンやオランダでも、衣類の廃棄問題を解決する法案を作成しています。現状、日本では法律による規制はありません。しかし、「企業は必要な分だけ生産し、売れ残りにも責任を負う」という考え方は広まっています。
食品や衣類の売れ残りが発生する原因
企業が食品や衣類の売れ残りを削減するために重要なのは、発生する原因を把握することです。製造・発注・在庫管理など、さまざまなプロセスが売れ残りにつながります。
ここでは、食品や衣類の売れ残りが発生する原因を紹介します。主な原因は5つです。自社に当てはまる原因がないか確認してみましょう。
製造での破損
製造プロセスで規格外商品や破損した商品が発生すると、販売ができず食品ロスにつながります。
規格外商品は定期的に発生しますが、商品の破損は未然に防止が可能です。運搬時に落とさないように注意する、壊れやすい商品を丁寧に扱うなどを意識する必要があります。
多くの食品は、パッケージが汚れただけでも廃棄処分となります。製造過程だけでなく、スーパーなどで店頭に並べる過程でも注意が必要です。
需要の予測不足
企業は商品の需要を予測して商品を仕入れますが、仕入れた量よりも販売量が少ないと売れ残りが発生します。置いている場所が悪い、シーズンに合っていないなど、商品が売れない原因はさまざまです。
例えば、店頭で商品を目立たない場所に置いていると販売機会を損失します。クリスマスツリーなどの冬季限定の商品を夏場に仕入れても、需要を獲得できません。
このようなケースを防ぐには、従業員の勘に頼った予測ではなく、過去の販売データや市場の動向などを分析する必要があります。
過剰な仕込み
飲食店では、予測した来客数に応じて仕込みを行います。しかし、飲食店の来客数はさまざまな要因で来客数が変化するため、過剰な仕込みによって売れ残りが発生します。
天気や時間帯、曜日などのあらゆるケースのデータ分析が必要なため、完全予約制の飲食店でない限り、来客数の予測は困難です。正確な予想ができない場合は、食品の保存方法を徹底して食品ロスの削減に取り組むとよいでしょう。
賞味期限が来る前の回収
食品業界には「3分の1ルール」があります。これは、製造から賞味期限までの期間を3等分し、メーカー(および卸売業者)・小売業者・消費者の3者が均等に分け合うという慣習です。
最初の1/3は食品メーカーが卸売業者を介して小売業者に納品できる期間、次の1/3は小売業者が店頭に並べて消費者に販売できる期間、最後の1/3は、消費者が食品を消費する期間です。
販売できずに最後の1/3に入った場合、小売業者は商品を卸売業者に返品しなくてはなりません。この慣習によって賞味期限前に食品を返品し、売れ残った商品を廃棄する機会が増えています。
食品ロスを減らすには、従来よりも賞味期限の長い商品を開発する、最後の1/3を過ぎた食品は安く売るなどの工夫が必要です。
在庫管理不足
飲食店は食材を扱うため、在庫管理が困難です。正確な仕入れを行ったとしても、管理不足によって賞味期限・消費期限切れの食材が発生します。飲食店は商品の味や見た目が企業の信用に影響するため、状態の悪い食材を廃棄します。
このようなケースを避けるには、適切な温度での保管と「先入れ先出し」の徹底が重要です。また、肉や魚から出るドリップや野菜に付いた土は他の食材に悪い影響を及ぼすため、種類ごとに分けて保管する必要があります。
売れ残りを減らす企業の取り組み【事例】
商品の売れ残りを減らすには、自社に合った方法で正しく施策を実行する必要があります。
他の企業が実践した方法を知ることで、自社が取り組むイメージをつかめます。ここでは、株式会社コークッキングと株式会社FINEの事例を見てみましょう。
株式会社コークッキング
株式会社コークッキングは、フードシェアリングサービス「TABETE(タベテ)」を提供し、食品ロスの解決に努めています。
TABETEは、廃棄になりそうな料理や飲食店を顧客に告知するアプリケーションです。顧客は近くの飲食店で食べたい料理があれば、引き取り期限を設定した上で決済し、店舗に受け取りに行きます。
顧客のサービス登録・サービス利用に料金はかかりません。ロス商品のため通常の価格よりも安くなり、顧客にもメリットがあります。飲食店も初期費用や出品料はかからず、無料で導入できます。
株式会社FINE
株式会社FINEは、衣類の大量廃棄を防ぐために「Rename(リネーム)」というプロジェクトを立ち上げました。
アパレルの過剰在庫を引き取り、ポップアップストアやオンラインストアで再販するプロジェクトです。顧客は、元のブランドよりも割安で購入できます。
過剰在庫を再販する企業は他にもありますが、Renameの特徴は元のブランドタグを外し、Renameブランドとして販売することです。
訳あり商品というイメージがないため、顧客から信頼を得られます。他の再販衣類と違い、洗濯表示タグが取り付けられており、洗濯やクリーニングも安心です。
食品ロスを削減するための売れ残り対策
ここでは、食品ロスを削減するための売れ残り対策を確認しましょう。売れ残りの削減には大規模な施策も重要ですが、ひとつひとつのプロセスを見直して改善することで確かな効果が表れます。
製造・仕入れのやり方を変えるだけでなく、顧客との信頼関係を構築することも対策のひとつです。
食品ロス対策で信頼関係を作る
近年、世界各国でSDGs(持続可能な開発目標)の意識が浸透しました。食品ロス対策は、SDGsが掲げる目標およびターゲットに該当します。
食品の売れ残り対策を講じることで、顧客は「社会問題に対する意識が高い企業」と認識するでしょう。顧客と信頼関係を作るため、新たな顧客を作るために、企業は食品ロス対策へ積極的に取り組む必要があります。
規格外の食材や衣類を活用
企業の過剰な仕入れや生産が、食品の売れ残りにつながります。過剰に在庫を持たないためには、作業工程の見直しが重要です。需要に対し、適切な在庫を確保するように努めましょう。
食品は賞味期限などの理由で廃棄処分となるケースがあり、物価変動で需要も変化します。さまざまな情報を考慮して適正在庫を維持するには、システムの導入が有効です。
製造でロスを作らない
AIによるX線検査を活用すれば、早い段階で食品への異物混入を検知できます。また、ボトルの二重構造や個別包装など、加工の工夫で賞味期限の延長が可能です。家庭における食品の廃棄を削減できます。
衣類に活用できるのは、3Dシミュレーションです。出来上がりイメージを確認することで、資源を使用する前の段階で不具合を発見し、不良在庫の発生を防ぎます。
衣類は加工工程が後半になるほど、不良在庫の発生リスクが高まります。有効な手段のひとつが、染色前の状態で多くの在庫を確保することです。受注してから短期間で加工すれば、販売機会を損失せずに不良在庫の発生を抑制できます。
需要と供給のバランスを取る
売れ残りを削減するには、需要と供給のバランスに合った生産や販売手法が重要です。例えば、恵方巻きは節分の時期に売れますが、時期が過ぎると売れなくなります。
季節・天候・イベント・家族構成などを考慮して、生産・販売をしましょう。予約販売や小分け売りを活用すれば、必要な人に必要な数だけ販売できます。
売れ残り削減だけに重点を置くなら、衣類は大量生産より小ロット生産が効果的です。しかし、コストがかかるため、その分価格を上げると売り上げ低下のリスクがあります。
ターゲットである顧客が購入しやすい価格帯を把握し、適切な販売価格と小ロット生産規模の設定が重要です。
作業工程や在庫管理の見直しをする
企業の過剰な仕入れや生産が、食品の売れ残りにつながります。過剰に在庫を持たないためには、作業工程の見直しが重要です。需要に対し、適切な在庫を確保するように努めましょう。
食品は賞味期限などの理由で廃棄処分となるケースがあり、物価変動で需要も変化します。さまざまな情報を考慮して適正在庫を維持するには、システムの導入が有効です。
売れ残りの削減にはAI導入が有効?メリットを紹介
人の手で売れ残り対策をするには大きな手間がかかります。対策しても、人的ミスを完全に防止するのは困難です。
近年、さまざまな業務へAIの導入が進んでいますが、売れ残りの削減にもAIは有効なのでしょうか。ここでは、売れ残りの削減にAIを導入するメリットを確認しましょう。
生産数などの予測精度が高い
AIを導入するメリットのひとつが、予測精度の高さです。需要予測は根拠となるデータが多いほど、精度の高い結果を出します。
AIは、時系列分析法・移動平均法・指数平滑法・回帰分析など、さまざまな方法で人間が扱いきれない大量のデータを分析できます。
人の勘と経験に頼っていた需要予測をAIが行うことで、販売機会を逃さず売れ残りの防止も可能です。
AIの需要予測は、生産計画の立案や在庫数の最適化、来客数の予測などで活用できます。小売業・卸売業・製造業など、業種を問わず有効です。
不良商品の発生が抑えられる
AIは商品の外観検査にも活用できます。外観検査とは、商品を出荷する前に汚れや異物、不良部品の有無を確認する作業です。
不良商品を出荷すると売れ残りが発生するだけでなく、企業イメージの低下にもつながるため、徹底して検査を行う必要があります。ルーペや顕微鏡を使った目視による検査では、大きな時間と労力がかかります。
AIは過去のデータを基にした画像認識技術により、外観検査の自動化が可能です。人件費や作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、高い精度で不良商品を発見します。
ノーコードAI『UMWELT』で売れ残りを削減!
AIの導入は売れ残りの削減に有効です。しかし、AIを扱える人材が確保できない企業様もいるのではないでしょうか。TRYETINGのノーコードAI『UMWELT』は、専門知識がなくても簡単に使用できます。ここでは、UMWELTの魅力と導入事例を紹介します。
ノーコードだから簡単に需要予測が可能
UMWELTはノーコードのため、AIやプログラミングの知識が必要ありません。需要予測や在庫管理、自動発注など多数のアルゴリズムを組み合わせるだけで、目的に合ったシステムを構築できます。
カスタマーサクセスによる運用サポートも用意しているため、導入後も安心です。データがうまく前処理できない、アルゴリズムの組み合わせ方が分からないなどの課題が生じたときは、データ分析の専門家が直接解決します。
UMWELT導入の事例紹介
スガキコシステム株式会社様は、東海地区を中心に店舗をチェーン展開している企業です。現場の工数削減や食品ロスの削減を目的にUMWELTを導入しています。店舗の売上予測に活用した結果、人間による予測以上の結果を出しました。
UMWELTは既存データとの連携が可能なため、準備の手間とコストを抑えながら精度の高い結果を実現しています。今後は、POSデータを活用した品目ごとの予測など、AIに任せられる業務へ積極的に活用する予定です。
まとめ
需要の予測不足や製造での破損によって、売れ残りが発生します。企業にとって、売れ残りは利益の損失です。あらゆるプロセスで業務を見直し、売れ残りを削減する必要があります。
AIを導入することで、需要予測や外観検査の自動化が可能です。人の手で実行するよりも効率的に売れ残りを削減できます。
TRYETINGのUMWELTは、専門知識がない人でも簡単に活用が可能です。無料相談から受け付けておりますので、ぜひお問い合わせください。
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