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物流業におけるKPIの活用法や事例は?導入のポイントもチェック
目次
物流業の経営者の中には、どのように業務効率を上げればよいのか分からないという方もいるでしょう。業務効率化に効果的なKPIの活用法や、AIを活用した事例について知れば、業務効率を高める具体的な方法が分かります。そこでこの記事では、KPIの種類や算出方法、導入のポイントなどをご紹介します。
物流業におけるKPIとは
新型コロナウイルス感染症の影響でECサイトを利用する人が増えたことや再配達などの要因により、近年はしばしば物流業の人手不足が話題に上ります。物流の効率化は早急に解決すべき課題です。EC市場の拡大や少子高齢化による労働力不足の懸念もあり、物流業務を効率化する必要性はますます高まっていくでしょう。
KPIは物流の効率化を図る上で重要な指標です。意味や活用方法を見ていきましょう。
KPIの意味
KPIは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。目標を達成する過程において、達成度合いを測定したり監視したりするために設定する定量的な指標です。
物流業界でよくチェックされている「実車率」や「積載量」などの指標は、運行効率向上にKPIを活用している例といえます。KPIの活用は国土交通省も推奨している方法です。
ドライバーの人手不足や燃料の価格高騰で厳しい状態に置かれる物流業界が、今後も発展して社会のニーズを満たしていくためには、これまでよりも高度な経営が必要と考えられています。KPIを活用して、業務の効率化と利益の向上を目指しましょう。
物流業での活用法
KPIは、業務量に合った人員の配置をはじめとした社内の生産性改善や、荷主と連携した物流改善に活用できます。各業務における課題にKPIを設けて測定し、目標に対する到達率を数値で把握しましょう。
これにより問題点や発生原因が可視化され、解決に向けた行動を取りやすい状態になります。うまく活用すれば、荷主や取引先との共通認識を持てるようになり、コミュニケーションが促進される点もメリットです。
荷主が物流事業者を客観的に評価する指標として利用すれば、努力した人や組織が適切に評価される仕組みを構築する目的でも活用できます。
物流フローで利用されるKPIの例
KPIにはさまざまなものがあり、物流のプロセスに合わせて何をどのように使うか選択する必要があります。課題があるプロセスごとに複数のKPIを使用して、業務改善を図るのが一般的な方法です。
改善計画をうまく進めていくには、代表的なKPIの種類を理解し、自社のケースに当てはめられるか考えます。物流フローでよく利用されているKPIの例を知り、業務効率の改善に役立てましょう。
コスト・生産性
保管やピッキングのプロセスでは、「充填率」をはじめとした保管効率、数量あたりの物流コストなどの計測が効果的です。倉庫や物流センターなどでの保管スペースの問題は、生産性や作業効率に関わります。
ピッキング作業では、作業員の移動歩数を抑えられれば効率的な作業が可能です。従業員1人あたりがどの程度の利益を出しているかをチェックする「人時(にんじ)生産性」も、よく使用されています。
輸送・配送時は「実車率」「実働率」「積載率」などのKPIを計測するのがおすすめです。それぞれのプロセスで生じる「日次収支」は、コストを把握するための重要な指標といえます。
品質・サービスレベル
品質やサービスレベルの向上に役立つKPIの種類も確認しましょう。「棚卸差異」は在庫の紛失や盗難などによる、在庫管理の改善に活用できます。
「誤出荷率」「誤配率」「遅延・時間指定違反率」などを正しく把握し、改善に役立てることもサービスレベルの向上に効果的です。
「クレーム発生率」の計測も、品質改善やサービスレベルの向上に役立ちます。クレームの原因になる「汚破損率」は商品の破損や汚れの発生率を把握でき、さらに温度管理の失敗などを数値化すると、発生の原因を客観的に探し出して対処しやすくなります。
物流条件・配送条件
荷主による出荷指示のプロセスでは、「出荷ロット」や「出荷指示遅延件数」などのKPIを利用します。輸送効率向上や物流効率改善のために使用しましょう。
輸送・配送時のプロセスでは、「配送頻度」「納品先待機時間」「納品付帯作業時間」「納品付帯作業実施率」などを計測すると、業務改善に役立ちます。
物流条件や配送条件の改善には、荷主との連携が欠かせません。「納品先待機時間」や「納品付帯作業時間計測結果」は、荷主が原因で発生する業務の遅れや付帯作業について、改善案を示すための材料になります。
物流業でよく使われるKPIの算出方法
物流の効率化に使えるKPIの種類が分かったところで、算出方法も見ていきましょう。KPIは種類によって算出方法が異なります。KPIをうまく活用するには、目的に応じたものを使い分けで正しく計算する工夫が重要です。
物流プロセスごとに、よく使われるKPIの算出方法を紹介します。
物流コストや実車率など
物流センターで発生するコストを管理するための指標や、車両の空車走行を減らすための稼働状況を計測する指標など、代表的なKPIごとの計算方法を紹介します。
・保管効率:保管間口数÷総間口数
・人時生産性:処理ケース数÷投入人時※
・数量あたりの物流コスト:物流コスト÷出荷数量
・実車率:実車キロ÷走行キロ
・実働率:実働日数÷営業日数
・積載率:積載数量÷積載可能な数量
・トラックの日次収支:1日あたりの収益-1日あたりのコスト(1台あたり)
※人時:完了までにかかる人数と時間の積で、作業量を表す単位(5人で3時間かかった場合は15人時)
誤出荷率や納期遅延の発生率など
荷主や顧客に好印象を与え事業を継続していく上で、サービスや品質を向上させることは重要です。精度を向上させれば、信頼を獲得しやすくリピーターの確保にもつながります。サービスや品質に関わる、代表的な指標の算出法を紹介します。
・棚卸差異:棚卸差異÷棚卸資産数
・誤出荷率:誤出荷が発生した件数÷出荷指示を出した数
・遅延・時間指定違反率:遅延・時間指定違反が発生した件数÷出荷指示を出した数
・汚破損率:汚損・破損が発生した件数÷出荷指示を出した数
・クレーム発生率:クレームが発生した件数÷出荷指示を出した数
出荷ロットや配送頻度など
出荷ロットや配送頻度などの物流条件や配送条件に関わる指標は、荷主と事業者が連携して利用できます。荷主にデータを提示したりデータの収集に協力してもらったりすることで、具体的な改善案を練り、物流効率の改善に役立てましょう。
・出荷ロット:出荷数量
・出荷指示遅延件数:〆以降に出荷指示を出した件数
・配送頻度:配送回数÷営業日数
・納品先待機時間:納品先で待機した時間の平均
納品付帯作業時間や作業実施率
契約にない「付帯作業」に時間を割かれるのは、効率化を妨げる原因のひとつです。業務内容の実態を把握し、契約外の業務を是正するために、納品付帯作業時間や作業実施率を計測しましょう。
納品先で契約外の付帯作業が発生する場合に、作業時間や作業実施率などを計測するために役立つ算出方法を紹介します。
・納品付帯作業時間:納品先で付帯作業に割いた時間の平均
・納品付帯作業実施率:付帯作業を実施した実施回数÷納品回数
納品付帯作業とは、依頼にはなかった積み込み作業や荷下ろし作業などのことです。国土交通省が定める『標準貨物自動車運送約款』では、付帯作業に見合った運賃を請求することと決められています。
(参考:『○ 標準貨物自動車運送約款(平成二年運輸省告示第五百七十五号)』)
物流業にKPIを導入するポイント
これまでにKPIを活用して測定や評価を行った経験がないと、どのように導入すればよいのか悩む可能性があります。手順や注意点が分かっていれば、失敗をせずに済みます。
KPIを導入する際に押さえておきたいポイントを、取り組む前段階の準備、実際に運用するときの工夫の両面から見ていきましょう。
実態を可視化し利用目的を明らかにする
KPIの活用で物流業務の効率化を目指すなら、まずは業務実態を可視化して課題を洗い出し、KPIを導入する目的を明確にしましょう。「他社と差別化を図るためにサービスを向上したい」「効率的に業務を進めたい」など、企業によって目指すゴールはさまざまです。
何を目的にするかによって、適したKPIが異なります。利用目的を明らかにし、課題を解決するためにデータの入手や既存のデータの整理を進めましょう。
KPIを活用するにあたっては、組織のトップや監督者だけで判断するのではなく、従業員全体で共通の理解を深めていく必要があります。分かりやすいルールの作成や、社内に浸透させるための研修も併せて実施しましょう。
データをもとに改善に取り組む
KPIを設定して収集したデータをもとに、業務の効率化・最適化を阻害する原因の特定を行いましょう。
業務改善方法のひとつに、PDCAサイクルがあります。PDCAは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4つから成り立ち、このサイクルを回すことで、目標を達成できる流れです。
運用後も物流KPIに基づいた目標値・評価基準の見直しや、改善活動を進めましょう。目標の数値と実態の差を可視化し、達成感を得やすくする工夫も大事です。
データの分析や予測が得意なAIを導入すると、蓄積されたデータの収集や業務の効率化、属人化の解消に効果的です。
荷主との連携を強めて取り組む
物流業を効率化するには、物流事業者と荷主の双方がKPIを利用して、実態を把握し連携する必要があります。自社で改善のための対策に取り組んでいても、荷主の理解や協力が得られなければ、物流条件の改善は困難です。
例えば待機時間や発荷主側に原因がある遅延の改善には、荷主との連携が不可欠といえます。KPIを使って客観的に現状を把握し、改善案を示しましょう。
荷主側に物流条件の改善に必要なデータが全てそろっているわけではないので、実態を知るための情報を提供しなければ、改善のために何をしたらよいか判断できません。荷主と連携しながら、物流効率の向上に取り組んでいきましょう。
UMWELTは物流のデータ分析や予測に活躍
TRYETINGの『UMWELT』は、プログラミングの知識がない方でも、簡単に使える工夫がなされたAIツールです。AIは定量的な分析を得意としているので、物流効率を向上させる方法として最適です。自社で一から開発する手間やコストをかけずに、運用を開始できます。
開発期間や人材を確保する余裕がなく、スピーディーに導入したい場合におすすめです。コストを抑えて生産性を高めるために役立つ、UMWELTの特徴を見ていきましょう。
ノーコードAIで数値を分析
UMWELTはさまざまな数値の分析に使える、ノーコードAIツールです。特別な専門知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作で扱えます。荷物量や作業時間などの予測を行い、業務の効率化を図りましょう。
UMWELTに搭載されているアルゴリズムを使用すれば、データの前処理の段階から自動化が可能です。日頃の業務で使用しているExcelなどのデータとも連携できます。
分析に使用するCSVデータの結合やデータの収集なども、RPA機能を使った自動処理が可能です。手間をかけずに大量のデータを使って分析できるので、本来の業務を圧迫しません。
専門家の伴走プランがあり安心
AIを業務に導入するにあたって、どのように進めていけばよいのか不安を感じる方もいるでしょう。ITやプログラミングに詳しくない方でも使用可能とはいっても、応用的な使い方をしたい場合に疑問が出てくる可能性はあります。
運用中に「予測の精度が思ったように上がらない」「アルゴリズムの組み合わせ方が分からない」など、新しい課題が見つかるケースもあるでしょう。
UMWELTはコンサルタントがアドバイスを提供するプランも用意しているので、自社に合った運用が可能です。使用法に関する講習も開催しています。
トラック物流改善システムに『UMWELT』を導入した事例
3Gサポート株式会社様は、工場の生産工程の自動化を促進するFAaaS(Factory Automation as a Service)を開発している企業です。
トラック物流改善システム『AirDia(エアダイア)』において、荷物量や作業時間を予測するためにUMWELTを導入しています。
AIの活用により、精度の高い予測ができるようになりました。荷主側のトラックダイヤ最適化や作成工数の削減が可能になり、ドライバーの待機負担を軽減することに成功しています。
まとめ
物流業の効率化は、今後の社会を支えていく上で必要不可欠だといえます。業務プロセスの改善を行う際にKPIを取り入れると、客観的なデータに基づいた改善策を打ち出せる点がメリットです。
自社だけで活用するのではなく、荷主と連携して物流条件を改善するためにも、KPIの導入が求められます。定量的な評価によって努力が目に見える形になり、モチベーションアップにつながる点も見逃せません。
自社の課題を解決し生産性を向上するために、KPIを活用しましょう。AIを導入すれば、さまざまな数値の分析を効率的に進められます。スピーディーかつ簡単にAIを導入したいなら、ぜひTRYETINGのUMWELTを検討してみましょう。
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