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物流のコストを削減するには?現状と事例から対策方法を見極めよう
目次
物流過程で発生するコストは事業に影響を与えます。「少しでもコストを削減したい」「どのような対策が必要なのか」と悩む方もいるのではないでしょうか。
この記事では、物流コスト削減の基本と成功事例を紹介します。最後まで読んでいただければ、業務の可視化など重要なポイントを把握できるでしょう。
物流のコストに関する基礎知識
物流プロセスで発生するコストは多岐にわたるため、ひとつひとつの内訳を理解するのは困難です。
しかし、売上比率に占める物流コストは近年増加傾向にあり、物流コストの把握は企業の成長にとって重要といえるでしょう。ここでは、物流コストの定義と物流コスト比率の傾向を紹介します。
物流コストとは?
物流とは、生産者から消費者に渡るまでの物の流れで、輸送や保管にコストがかかります。
企業の物流コストは、事業の中で極力減らしたい費用のひとつです。しかし、物流過程で発生するコストは種類が多く、どの部分にいくら費やしているかを把握するのは困難です。
そのため、知らないうちに物流コストが増加していると気付くこともあります。
物流コスト比率
日本ロジスティクスシステム協会は、荷主企業を対象に物流コストに関するアンケート調査を毎年実施しています。
2022年度の調査結果(有効回答195社)を見ると、企業の売上高に対する物流コスト比率は、全業種平均で5.31%でした。前年度の5.70%と比較して0.39ポイント減っていますが、依然高い状態が続いています。2019年度までは4%台後半で推移していたものの、2020年度は5.38%と14年ぶりに5%台を記録しました。
近年のコスト比率増加の要因は、労働力不足によるトラック運賃や荷役費の値上げです。新型コロナウイルス感染症の流行により、問題が顕著に表れたと考えられます。
なお、この調査では2021年度(2021年4月〜2022年3月)の回答が3分の2を占めているため、原則的に2021年度の実績値を示しています。
物流コストの主な種類
物流コストには、支払い物流コストと社内物流コストの2種類があります。コストの実態を把握するために、まずはコストを種類ごとに分類しましょう。
ここでは、支払い物流コストと社内物流コスト、それぞれのコストの特徴を説明します。
支払い物流コスト
支払い物流コストは、物流業務を外部に委託した際に発生するコストです。自社工場から消費者に製品が届くまでには、トラックや船舶を利用した輸送の他、倉庫での保管や倉庫のレンタル、荷役・梱包といった作業にもコストがかかります。
社内物流コスト
物流業務を外部に委託せず、自社で行う場合に生じる費用を社内物流コストと呼びます。例えば、製品を輸送するトラックの維持費や燃料費、製品を保管する倉庫の維持管理費などです。物流を担う従業員の人件費も含まれます。
会計上、他の費用に紛れて、コストの全体像が不明確になりやすい費用です。
物流コストを構成する内容
物流には輸送・荷役・保管などさまざまな工程があり、各工程でコストが生じます。これらのコストを4つに分類すると、全体像をつかみやすくなるでしょう。ここでは、運送費、荷役費、保管費、物流管理費の概要を解説します。
運送費
運送費は、物を運ぶ際にかかるコストです。製品が消費者に届くまで、一般的には複数の輸送過程があります。
具体的な費用は、工場から倉庫まで専用のトラックで輸送するチャーター費、倉庫から小売店や消費者に商品を届ける小口配送料金などです。自社でトラックなどの輸送手段を保有する場合、燃料費や減価償却費も運送費に含みます。
荷役費
荷役費は、倉庫を利用する際の荷物の入出庫にかかるコストです。倉庫に到着した荷物を確認する入庫作業では、荷物の数量に1ケース当たりの単価を掛けてコストを算出します。出庫作業も同様です。
倉庫で行う梱包やラベル貼り、組み立てといった流通加工にかかる費用も全て荷役費です。輸出をする企業では、通関料や関税も含まれます。
保管費
保管費は、荷物を一時的に保管する際に生じるコストです。外部の営業倉庫を借りている場合、賃貸料や保管料だけでなく、在庫管理や荷物の出し入れにかかる入出庫料も含まれます。
営業倉庫の保管料は、荷物の重量でコストが決まる寄託保管料と、保管に要する面積で決まる坪貸し保管料の2種類があります。
物流管理費
物流管理費は、複雑な物流を効率的に管理するためのコストです。大部分を人件費が占めるため、物流人件費と呼ばれることもあります。例えば、入出庫指示伝票や納品書の発行、在庫管理に関わる人件費が相当します。
また、システムの導入検討や保守管理のコストも物流管理費の一部です。
物流のコスト削減のために現状を知ろう
近年の物流を取り巻く環境は、厳しさを増しています。背景を把握することでコストアップのリスクを回避できます。コスト削減を計画する前に、物流の現状を理解しましょう。
ここでは、物流業界が抱える3つの課題を紹介します。
人員不足と高齢化
物流コスト上昇の要因のひとつが、物流領域の人員不足と高齢化です。日本では、少子高齢化が進み、生産年齢人口は今後も減少を続ける見込みです。
道路貨物運送業の運転従事者数は、1995年の98万人をピークに減少を続け、2020年には66万2,000人、2030年には51万9,000人になるとの予測もあります。
また、トラックドライバーの高齢化も深刻です。全産業の平均年齢も毎年上がっていますが、トラックドライバーの平均年齢は全産業平均を常に上回っています。
物流需要の増加
近年、社会ニーズが大きく変化し、物流需要が増加傾向にあります。その要因として挙げられるのが、EC利用の急増による宅配便の取扱件数の増加です。
EC市場は、2019年まで毎年成長していましたが、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年以降はそれ以上に大きく伸びています。
2019年の宅配便取扱個数は43億2,300万個でしたが、2020年は48億3,600万個となり、前年比111.9%と急増しました。2021年は49億5,300万個で、さらに増えています。
業務負荷の増加
深刻化する人員不足と長時間労働により労働環境が悪化し、物流領域では従業員の負担が次第に大きくなっています。
厚生労働省の労働力経済動向調査において、運輸業と郵便業の事業所の半数以上が「労働者が不足している」と回答しました。全産業に比べて10%程度高い数値です。
トラックドライバーの労働時間も他の産業に比べて2割程度多く、労働環境の厳しさを物語っています。
物流のコスト削減を実現するアイデア
ここからは、物流コスト削減につながる具体的なポイントを5つ紹介します。どのような対策を取るにも、現状を把握することが大切です。まずは、業務内容の改善から始めるとよいでしょう。
抜本的な取り組みもありますが、高い効果が期待できる反面、リソースやリスクも大きくなります。十分に検討を重ねて計画しましょう。
業務内容の改善
物流コストを削減するには、現状把握が重要です。どの部分にいくら費やしているかを確認する際に有効なのが、業務とそれぞれのコストの可視化です。
物流業界は、ドライバーの時間外労働を年間960時間に抑える法改正を発端とした「2024年問題」に直面しています。この規制に対応するために、企業はドライバーの労働時間を正確に把握しなければなりません。
また、時間外労働が月60時間を超えた場合、割増賃金率は50%です。業務改善によって労働時間を短縮すれば、コスト増加を避けられます。
人件費や管理費の削減
物流コストの中で大きな割合を占めるのが、人件費です。業務の見直しで効率化を図り、人件費を減らせば、大きなコスト削減が期待できます。
倉庫業務で従業員が行う作業にはミスがつきものです。物流システムの導入によりミスが減ると、無駄な時間と作業が減り、人件費の削減につながります。
システム導入には初期投資が必要ですが、人件費や荷物の管理にかかるコストの削減効果が期待できるでしょう。
物流拠点の見直し
複数の物流拠点がある場合、拠点の数が多いほど保管費や人件費といったコストがかかるため、拠点の見直しが効果的です。また、分散している拠点を集約化すれば、保管費以外にもさまざまなコストが削減できます。
他にも、倉庫の在庫量が把握しやすくなる、トラックが物流拠点間を輸送する無駄が減ることで配送効率が上がるといったメリットが享受できるでしょう。
物流システムの導入
物流システムとは、物流工程全体を効率的に管理するためのシステムです。複雑な工程を一元管理し、入出庫や在庫管理、配送管理を効率化します。
倉庫管理システム(Warehouse Management System:WMS)と在庫管理システムの2つが代表的です。
WMSは、倉庫内の物流工程を効率化するためのシステムです。入出庫管理や在庫管理によって倉庫内の状況をリアルタイムで把握することで、人為的ミスを減らし、作業を標準化する効果が期待できます。
在庫管理システムは、倉庫内の在庫管理に特化したシステムです。入出庫や配送、受発注などの業務も管理できます。
アウトソーシングの利用
自社で物流コスト削減が難しい場合、外部企業にアウトソーシングするのも一案です。利用可能なアウトソーシングには、3PL(Third Party Logistics)と4PL(Fourth Party Logistics)があります。
3PLは、物流業務を包括的にアウトソーシングする方法です。物流業務の負荷が大きくなる中、本来の業務に集中したいときに利用します。
4PLは、3PLに加えて物流業務のコンサルティングも行います。物流コストの削減を目的にした物流の最適化もサポートしてくれるでしょう。
物流のコスト削減に取り組む3つの方法
物流コスト削減の具体的な方法として、以下の3つを紹介します。
・運賃、倉庫保管料、倉庫作業料の単価の低減
物流における各工程の単価を確認し、単価の妥当性を判断します。単価とは、営業倉庫を借りている場合は坪単価、作業に関しては1ピース当たりの作業単価などです。高いと判断したらコスト削減を要請します。
・拠点の集約化
日本全国に配置した拠点を1拠点〜3拠点に集約することで、賃料や管理コストを削減できます。拠点数が減ると配送距離が長くなり、運賃が増えるケースもあるため、総合的なコストで判断することが重要です。
・輸送、倉庫作業、保管業務の効率化
トラックの積載率や回転率・実車率を高めることで、輸送効率を改善するのもひとつの方法です。他にも、倉庫内のレイアウト変更や実態に合わせた情報システムの改修により、保管や倉庫内業務を効率化できます。
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(参考: 『【3Gサポート様】UMWELT活用事例|補助金活用でトラック物流改善システムに荷物量や作業時間を予測する機能を実装|TRYETING』)
まとめ
物流コストの増加は、企業の利益に直結します。しかし、物流業界の人員不足と高齢化により、今後も輸送費など物流に関するコストは増えるでしょう。
物流コストの削減には積極的な効率化が不可欠です。倉庫の集約化や物流システムの導入など、抜本的な取り組みが加速しています。
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