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製造業の生産性向上とは?事例から分かる業務見える化の重要性も解説
目次
少子高齢化が進む中、製造業では労働力の確保に悩んでいる方もいるかもしれません。少ない従業員でも生産を維持するために生産性向上を図る企業も増えています。
この記事では、製造業における生産性の意味や取り組みの手順、それによって得られるメリットを、具体的な事例を交えて解説します。生産性向上を目指す際のポイントを理解できるでしょう。
製造業の生産性向上に関する基礎知識
生産性向上に取り組む前に、日本社会での生産性の現状を把握することが大切です。他の先進国と比べて深刻な状況であることを知れば、生産性向上の重要性を理解できるでしょう。ここでは、生産性の定義と向上が求められる背景を解説します。
生産性とは
生産性とは、投入したリソースを活用してどれだけ効率的にアウトプットを得たかを示す指標です。一般的な生産性の定義は、以下の式で表します。
生産性=アウトプット/投入したリソース(インプット)
製品を生産するには、原材料や生産設備、生産に従事する人材が必要です。同じ量のアウトプットをより少ないリソースで得られれば、生産性は高くなります。
一方、新たな設備を導入してもうまく使いこなせなければ、アウトプットの量が増えません。その結果、生産性が向上しないこともあるでしょう。
求められる背景
日本の少子高齢化は、今後も長期にわたって継続すると考えられています。これに伴い、日本の労働力人口も減少を続けるため、企業の人材確保はより困難になるでしょう。
公益財団法人日本生産性本部は「労働生産性の国際比較2022」を公表しています。2021年における日本の1時間当たりの労働生産性(1時間に生み出す付加価値)は、49.9ドルと他の先進国に比べて低く、OECD加盟38カ国中27位です。また、1人当たりの労働生産性は8万1,510ドルで、順位は29位と高くありません。
労働力人口が減少し、労働生産性の国際競争力も低下する中、企業が事業を維持し成長するには生産性の向上が不可欠です。
生産性の意味と算出方法
生産性には、基本の定義から派生した「物的生産性」と「付加価値生産性」の2つが存在します。企業が生産性を指標として用いる際は、実情に合わせて適切なものを選ぶことが大切です。
それぞれの特徴を理解して、自社の生産性向上に役立つ指標を算出しましょう。
物的労働生産性
生産するものの大きさ・重さ・個数などの物量を単位として表す生産性を、物的生産性といいます。中でも代表的なのは、インプットとして労働者数を用いた物的労働生産性です。労働者1人当たりの物的労働生産性は、以下の式で算出します。
物的労働生産性(1人当たり)=生産量/労働者数
また、1人の労働者が1時間当たりに生産する量を示す労働生産性を用いることもあります。
物的労働生産性(1時間当たり)=生産量/(労働者数×労働時間)
物量を単位とする理由は、製品の価格を用いると変化する場合があり、指標として分かりにくいためです。
付加価値的労働生産性
物的労働生産性に対して、企業が新しく生み出した付加価値を単位とする生産性を付加価値的労働生産性といいます。企業が原材料や加工品を外部から買い入れ、それに新たに加えた付加価値に対する生産性を評価する指標です。
付加価値とは粗利のことで、売上高から原材料費・機械の修繕費などの経費を差し引いて算出します。1人当たりと1時間当たりの生産性を求める計算式は以下の通りです。
付加価値的労働生産性(1人当たり)=付加価値/労働者数
付加価値的労働生産性(1時間当たり)=付加価値/(労働者数×労働時間)
全要素生産性
労働力・原材料・資本など、生産に必要な全ての要素で生産量・付加価値を割って求める指標を、全要素生産性といいます。
製品を製造する際は資本を投入することが多いものの、労働生産性では資本の変化は考慮していません。そのため、全ての生産要素を考慮した指標が必要です。
全要素生産性=生産量/(労働力+原材料+資本など)
全要素生産性の変化率は技術進歩率と呼ばれ、技術進歩を表す指標として利用できます。
製造業の生産性向上を妨げる原因
生産性向上を妨げる要因には「作業ミスによるロス」「コミュニケーション不足による情報格差」「人材不足による労働環境の悪化」などがあります。ここで紹介する内容を参考にして、自社の環境を見直してみましょう。
作業ミスによるロス
製造業では、製品が完成するまでにさまざまな作業があります。特に、従業員が少ない企業では1人が担当する業務範囲は多岐にわたり、毎日膨大な作業をこなすこともあるでしょう。
業務が複雑になるほどミスの頻度は高くなり、その対応に時間と手間をかけた結果、従業員と組織の生産性は悪化します。また、製造に用いる部品点数が多いほど作業の種類も増えるため、不良発生のリスクが高まるでしょう。
コミュニケーション不足による情報格差
原材料の調達から完成品の出荷まで、複数の部門が製造に関与します。高い生産性を維持するには、各部門が連携して適切なタイミングで業務を遂行することが重要です。
そのためには、関連部門の円滑なコミュニケーションや情報の共有が不可欠です。コミュニケーションが不足すると、各部門が連動した無駄のない作業ができず、待機時間が発生して生産性に影響を及ぼす恐れがあります。
人材不足による労働環境の悪化
製造業界では、労働力の安定的な確保が重要な課題となっています。日本の製造業を支えてきた団塊の世代が退職する一方で、若い労働者は減少傾向にあるためです。需要は変わらないのに従業員が減ると、1人当たりの負担は増加するでしょう。
長時間労働が日常的になり、未経験の業務も担当しなければならないなど、労働環境は悪化します。その結果、従業員のモチベーションが低下し、生産性も下がるという悪循環に陥るでしょう。
生産性向上を進める手順
生産性向上に取り組む際は、以下の流れに沿って進めると効率的です。
1.生産性向上の目的を明確にする
2.業務の可視化と取り組む範囲を決める
3.具体的な方法を決める
4.数値目標を設定する
まずは目的を明確にしましょう。生産性向上の必要性を従業員一人一人が理解し、トップダウンで協力できる体制を作ります。
次に既存業務を可視化し、取り組む範囲を決めましょう。従業員一人一人の作業項目と費やす時間を可視化し、ボトルネックになっているポイントを特定することで、対象とする業務を決めます。
全ての関連業務を可視化したら、どのプロセスに生産性を落とす要因があるか確認しましょう。要因ごとに具体的な方法を決めて実行に移します。
漫然と取り組むのではなく、数値目標を設定し、対策前後の効果を確認することが重要です。
生産性向上に成功している製造業の事例
生産性向上に取り組む際は、過去の事例を参考にすると具体的なイメージができて効果的です。
ここでは、製造業を営む企業の成功事例を3つ紹介します。どれも製造業に共通する課題にアプローチしており、企業の成長につながる生産性向上を達成した事例です。
太洋工業株式会社
和歌山県にある太洋工業株式会社は、従業員のワークライフバランスに配慮し、モチベーションを上げることで高い生産性を実現しています。生産性向上のために、以下の3つの取り組みを行いました。
・所定外労働削減
・年次有給休暇取得促進
・育児休業取得率の向上
取り組みの結果、2013年には従業員1人当たり24.35時間だった月平均所定外労働時間が、2016年には15.86時間まで減っています。また、2014年の年次有給休暇取得率は44.4%でしたが、2016年には52.2%に向上しました。
女性従業員の育児休業取得率は、2007年以降100%を維持し、2013年以降は出産からの復職率も100%を達成しています。
ダイニチ工業株式会社
新潟県にあるダイニチ工業株式会社は、1980年に石油ファンヒーターの販売を開始し、順調に売り上げを伸ばしていました。しかし、1998年に赤字決算を経験します。
この状況を受け、生産台数を増やしてシェア拡大を狙い、コストダウンと商品提供のスピードアップを目指す方針を掲げました。
生産現場では、受注から出荷までの販売情報や生産計画、実績を共有するだけでなく、ラインの自動化と効率化、生産スタッフの技術向上の取り組みを強化しています。
その結果、受注から4時間で製品が完成する「ハイドーゾ生産方式」の構築に成功しました。
株式会社西野物産
大分県にある株式会社西野物産は、カップ麺などに入っている「かやく」を製造しています。
かやくの製造過程で、自動供給が難しいチャーシューの取り扱いに課題がありました。しかし、自動化システムを導入した結果、作業にかかる人数を2人から1人に減らすことができました。さらに、労働時間も3.6時間から1時間に短縮されました。
この自動化により、1時間当たりの生産量も3,600個から4,800個に増加し、労働生産性は9.6倍に向上しました。効率的な生産を実現すると同時に、人員の削減と労働時間の短縮に成功した事例です。
生産性向上で製造業が得られるメリット
生産性向上の主なメリットは「コストの削減」「品質の確保」「利益の増大」の3点です。生産性向上の手段はさまざまですが、取り組みの結果は企業の利益に直結します。それぞれの具体的な内容を把握しましょう。
コストの削減
人件費は、事業コストの中で大部分を占めます。生産性向上によって従業員の長時間労働を減らせれば、残業代の削減も可能です。
また、製造時間を短縮することで工場の光熱費も削減でき、総合的なコスト削減額は大きくなることが期待できます。
品質の確保
生産性向上により、不良品の発生が減るなど品質の向上も図れます。製造に携わる従業員のスキル均一化やロボット・画像認識といった新しいテクノロジーの導入がその一例です。
また、職場環境が改善すると従業員の集中力が向上してミスも減り、アウトプットの質も良くなります。
利益の増大
生産性が向上すると、業務に存在する無駄や作業ミスが減り、費用抑制が可能です。調達コストや人件費の削減につながり、利益の向上が見込めるでしょう。
また、既存のリソースで生産量の増加が期待できるため、在庫不足による販売機会の損失も回避できます。
製造業の生産性向上では業務の見える化が重要
生産性向上に向けた取り組みを始める際、ポイントとなるのは業務の見える化です。目標や現状把握が漠然としていると、現場の混乱を招き、かえって生産性を落とす恐れがあります。
生産性向上を実現する手段のひとつである業務効率化では、以下の3つが重要です。
・業務の分解
・重複する作業など無駄な作業の発見
・要素ごとの課題の共有と解決策の決定
一見複雑に見える業務でも、単純な作業の組み合わせで成り立っています。細かい作業に分解し、全体の業務内容を把握しましょう。
次に、複数の部門や担当者で重複する無駄な作業を洗い出します。最後に課題を組織全体で共有し、最適な解決策を議論して決定します。
UMWELTは製造業の生産性向上に最適
生産性向上はあらゆる製造業でメリットを生みます。しかし、取り組みを始めようと思っても、何から手を付けたらよいか悩む企業様も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、TRYETINGの『UMWELT』です。UMWELTは、需要予測や在庫管理といった困難な業務を自動化し、生産性向上をサポートします。
ノーコード予測AIを使って業務属人化を解消
製造業にとって重要な業務は、需要予測と在庫管理です。予測を誤ると、「過剰在庫を抱える」「需要があるにもかかわらず販売機会を逃す」といった状況になりかねません。
需要予測は、経験のある限られた従業員しかできない属人的な業務になりがちで、「引き継ぎができない」「正確な予測ができない」などの問題も生じます。
UMWELTは、過去の実績データを用いて正確な需要を予測するAIツールです。専門的な知識や高度なデータ処理スキルがなくても利用できます。
製造業の事例
菓子メーカーの春日井製菓様では、需要予測業務を効率化するために、UMWELTを導入しています。
これまで、需要予測の指標は経験のある担当者しか出せず、「業務の引き継ぎができない」「現場の勘に頼っている」といった課題がありました。
UMWELTを導入してから3か月で、業務改善のPDCAを回すイメージができ、使用AIモデルが固まっています。今後は、在庫や出荷の最適化に向けた取り組みを行う予定です。
(参考: 『【春日井製菓様】UMWELT活用事例|ノーコードで予測業務を簡単にし、属人化を撤廃|TRYETING』)
まとめ
近年、労働力人口の減少やコストの増加など、企業はさまざまな経営課題に直面しています。課題解決には、生産性の向上による効率化が大切です。
生産性向上を実現する方法は多種多様なため、自社に適した方法を見つけ、高い成果を上げるのは容易ではありません。
UMWELTは、製造業の生産性向上に役立つ機能を搭載しています。導入も容易で専門知識を必要としません。ぜひご相談ください。
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