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4年で約4,500万円!? 学費高騰を続けるアメリカの大学、安く通う三つの方法とは?
目次
アメリカの大学の学費が高騰を続けている。米調査機関エデュケーションデータ・リサーチによると、2024年度のアメリカの大学費用(学費および生活コストなどの合計)の平均額は38,270ドル(約574万500円)で、前年比で4.11%増加したという。
大学費用の増加に伴い学生ローンの利用も拡大し、ローン利用者の借入残高額が2024年度第二四半期末時点で1.74兆ドル(約261兆円)に達した。大学へ通うことが普通のアメリカ人にとって、ますます普通ではなくなってきているわけだが、そんなアメリカの大学へ安く通う3つの裏技があるという。
2024年度最新のアメリカの大学費用は?
上述の通り、2024年度のアメリカの大学費用の平均額は38,270ドル(約574万500円、1ドル150円で計算、以下同じ)となっているが、この数字は比較的学費が安い公立大学の州内居住生徒用の学費も含んでいる。一般的にアイヴィーリーグ各校などの名門私立大学の大学費用は公立大学よりも高く、例えばハーバード大学の2024年-2025年度の年間学費は56,550ドル(約848万2500円)となっている。
しかし、この数字はあくまでも学費のみであり、ほかに必要な住居費や食費、医療保険料などを加えると、年間の大学費用は1,000万円を簡単に超えてしまう。
「比較的学費が安い」とされている公立大学も、名門校を中心に大学費用が高騰している。例えばUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の直近の年間大学費用は州外居住生徒用が76,259ドル(約1,143万円)で、こちらも1,000万円を超えている。仮に四年で卒業するとトータルで30万5,036ドル(約4,575万円)もかかるわけで、ミドルクラスの「普通のアメリカ人家庭」にとっては簡単に負担できる金額ではないだろう。
アメリカの大学へ安く通う方法
多くのアメリカ人にとって大学へ通うことがますます「高嶺の花」になりつつあるわけだが、実はアメリカの大学へ安く通う方法がある。実際、筆者の知人の中にも、これらの方法を使って通常よりもはるかに安く大学に通い学位を取得した人が複数存在する。以下でそれらの方法をお伝えしよう。
①アメリカ軍へ入隊する
アメリカの大学へ安く通う第一の方法は、アメカ軍へ入隊することだ。アメリカ軍は現役軍人および退役軍人向けに様々な教育支援プログラムを用意しているが、その中でもっとも多くの人に使われているのがPost9/11 GI Bill というプログラムだ。
2001年9月11日以降に90日以上アメリカ軍に勤務した人が対象で、勤務した合計期間や役務などに応じて、UCLAなどの公立大学の学費を最大100%までアメリカ軍が支払ってくれるという非常に気前の良い制度だ。私立大学へ通う場合でも、アメリカ軍と提携関係にある大学の学費のうち、年間最大で28,937ドル(約434万円)をアメリカ軍が負担してくれる。
アメリカ退役軍人局の公式ウェブサイトによると、例えばアメリカ軍に連続して24ヶ月専属で勤務した場合、公立大学の学費の最大80%をアメリカ軍が支払ってくれる。なお一般的には、高校卒業後最低2年間アメリカ軍に連続して勤務し、Post9/11 GI Billを利用する人が多いようだ。
筆者が通ったアメリカの公立高校(カリフォルニア州マリン郡)でも、卒業シーズンが近づくとアメリカ各軍の人事担当者が訪問してきて、アメリカ軍による教育支援プログラムの説明会を行っていた。このプログラムを利用して大学へ通う人は今でも一定数いて、数年間の軍の勤務という時間は取られるものの、今後も大学へ安く通う裏技として使われ続けることだろう。
②学費の安いコミュニティカレッジへ入学し、後に他大学へトランスファーする
アメリカの大学へ安く通う第二の方法は、学費の安いコミュニティカレッジへ入学し、後に他大学へトランスファー(転入)することだ。例えば、ロサンゼルスのコミュニティカレッジのサンタモニカカレッジの場合、直近の外国人学費は年間10,656ドル(約159万円)で、UCLAの49,354ドル(約740万円)の約五分の一となっている。一年間の学費の差額は38,698ドル(約580万円)にもなり、例えば最初の二年間をサンタモニカカレッジに通った場合、その差額は77,396ドル(約1,161万円)にもなる。最初の二年間をサンタモニカカレッジで過ごし、残りの二年間をUCLAで過ごして卒業した場合、UCLA学士の学位を1,161万円も安く取得できることになる。
ところで、サンタモニカカレッジからUCLAへの直近転入合格率は36%で、応募者の三分の二程度が不合格となっている。サンタモニカカレッジによると、合格者の平均GPA(Grade Point Average, 成績評価指標)は3.88で、相応の高成績をおさめる必要がある。この裏技は、コミュニティカレッジで高成績をおさめる自信がある人にのみお勧めだろう。ちなみにサンタモニカカレッジは、UCLAを含むカリフォルニア大学へ毎年多くの転入生を送り込む「最大の転出元」となっているそうだ。
③大学のWork Study Programを利用する
アメリカの大学へ安く通う第三の方法は、大学のWork Study Programを利用することだ。Work Study Programとはその名の通り、大学で何らかの仕事をしながら同時に学べる仕組みだ。Work Study Programはアメリカ政府が連邦予算から費用を拠出している公的プログラムで、利用者は最大週に20時間大学で仕事をして学費や生活費を稼ぐことができる(なお、一部の大学では大学外での仕事も認めている)。
Work Study Programでできる仕事は、キャンパス内売店の販売員、レストラン・カフェのスタッフ、キャンパスツアーのガイド、フィットネスセンターのスタッフ、図書館のアシスタント、学生寮の管理スタッフ、チューター、コミュニティスタッフといった、大学生活に直結したものがほとんどだ。特に学生寮で生活・通学している学生にとっては、勉強する空間、生活する空間、そしてお金を稼ぐ空間が大学というひとつのコミュニティ内で完結していることは大きなメリットだろう。
アメリカ政府によると、アメリカでは現在全米の3,000以上の大学が同プログラムに参加し、年間60万人の学生が同プログラムを利用しているという。同プログラムもアメリカの大学へ安く通う裏技として、今後も引き続き利用され続けるだろう。
アメリカの大学費用は今後も高い水準で推移か
以上、アメリカの大学へ安く通う3つの裏技を紹介した。以上の裏技は、普通のアメリカ人の多くが知っているが、なぜかそれほど一般的に使われていないものである。特に第一の裏技の「アメリカ軍へ入隊する」などは、当時の筆者に応募資格があればぜひとも利用したかったものであるが、当のアメリカ人の多くが利用の検討すらせず、最初から避けているように見える。
アメリカ軍の勤務が相応に大変で辛いものであることを暗に示しているのか、あるいは単に食わず嫌いのアメリカ人が多いのか知る由もないが、4600万人ものアメリカ人が利用している学生ローンと比べると利用者ははるかに少ない。これから大学へ進学を希望する若いアメリカの友人達には、アメリカ軍入隊というオプションを根拠のない先入観で判断せず、有望な選択肢の一つとしてじっくり検討されることをお勧めしたい。
なおアメリカ軍へは、日本人でもグリーンカード(アメリカ永住権)保有者であれば原則入隊申込可能だそうだ。しかしながら、筆者の友人・知人を含めた周囲の人で、アメリカ軍入隊の裏技を使って実際にアメリカの大学へ通ったという日本人を見たことはない。軍隊という組織が基本的に外国人にそれほどフレンドリーでないことが理由なのか、または青春期の貴重な数年間を投資することを厭う人が多いのか、あるいは日本人のグリーンカード保有者がそもそも絶対的に少ないのか、筆者には知る由がない。
参考文献
https://www.google.com/url?q=https://admission.ucla.edu/tuition-aid/tuition-fees&sa=D&source=docs&ust=1729734668239767&usg=AOvVaw3OnxAWH9TMJzRaV–mXkhJ
https://registrar.fas.harvard.edu/tuition-and-fees
https://admission.ucla.edu/tuition-aid/tuition-fees
https://www.va.gov/education/about-gi-bill-benefits/post-9-11/
https://www.military.com/education/gi-bill/find-your-new-gi-bill-tuition-and-fee-rate.html
https://www.smc.edu/admission-aid/apply/international-students/tuition-fees.php
https:// www.collegetransitions.com/blog/ucla-transfer-acceptance-rate-requirements-application-deadlines/#:~:text=Colleges%20that%20Send%20the%20Most%20Transfer%20Students%20to%20UCLA&text=Santa%20Monica%20College%20(1%2C548)%20%E2%80%93%2036%25%20accepted
https://www.act.org/content/act/en/students-and-parents/college-planning-resources/paying-for-college/work-study.html
https://ccrc.tc.columbia.edu/publications/participation-federal-work-study.html
前田 健二
経営コンサルタント・ライター
事業再生・アメリカ市場進出のコンサルティングを提供する一方、経済・ビジネス関連のライターとして活動している。特にアメリカのビジネス事情に詳しい。