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物流におけるバリューチェーンとは?分析方法やメリットを解説
目次
競争力強化や利益向上を目指す手段として、バリューチェーン分析があります。物流プロセス改善に役立ちますが、バリューチェーン分析の方法が分からない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、バリューチェーンの基本と分析方法、分析のポイントについて解説します。記事を読むことで、物流におけるバリューチェーン分析の具体的な流れや利益向上に向けた活用方法が理解できるでしょう。
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物流とバリューチェーンの関係
バリューチェーンは、企業が効率化や企業価値向上を図る上で重要な概念です。物流業界には混同しやすい言葉として「サプライチェーン」があるため、正確な意味を推測するのは難しいかもしれません。ここでは、バリューチェーンの概要とサプライチェーンとの違いを解説します。
バリューチェーンの概要
バリューチェーンとは、1980年にマイケル・E・ポーター氏著作の『競争の戦略』で提唱された概念で、原材料調達から消費者に届くまでの事業プロセスの中で生じる価値の連鎖を意味します。
企業は、調達・製造・物流・マーケティングなど機能ごとに価値を生み出しますが、実際に企業が生み出す付加価値は、単に機能ごとの価値の集合ではありません。バリューチェーン分析をすることで、各工程が生み出す付加価値を分析できます。
サプライチェーンとの違い
バリューチェーンと類似した言葉に、サプライチェーンがあります。サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、在庫管理、配送、販売、消費までの一連の流れで、自社だけでなく消費者に届くまでのプロセス全体を含む概念です。
製品がどのように消費者に届くのか、お金や物の流れに着目するサプライチェーンに対し、バリューチェーンは企業がプロセスごとに生み出す価値に着目します。
バリューチェーンを構成する主活動と支援活動とは?
バリューチェーンを構成するのは、消費活動に直接関わる「主活動」と消費活動に直接的な関わりがない「支援活動」の2つです。企業の業務がどちらの活動に分類されるのか、主活動と支援活動それぞれの内容について解説します。
主活動
主活動とは、企業活動のうち「消費者の消費活動に直接的な関わりのある活動」を指します。具体的な5つのプロセスは以下の通りです。
・購買物流
・製造
・出荷物流
・販売・マーケティング
・サービス
主活動に分類できるのは、何らかの理由で業務が停止すると消費者への供給が滞るため、一瞬でも止められない基幹的な活動です。
支援活動
支援活動とは「消費者の消費活動に直接的な関わりを持たない活動」です。企業の効率的な主活動をサポートする活動ともいえます。代表的な支援活動は次の通りです。
・全般管理
・人事・労務管理
・調達活動
・技術開発
全般管理は、財務・総務・経営企画など企業全体の活動を支援する活動です。人事・労務管理は、従業員の新規採用や福利厚生を管理します。調達活動は、社外から物品を調達する際の契約業務です。新技術の開発活動も支援活動のひとつに挙げられます。
物流業種別のバリューチェーンの考え方
以下の表は、代表的な業種のバリューチェーン一覧です。なお、同じ業界・業種でも企業によって活動内容が異なるため、一般的な活動を基に記載しました。自社のバリューチェーンを把握したいときに参考になるでしょう。
業種 | バリューチェーン |
トラック輸送業 | 車両購入・営業活動・契約・集荷・輸送・配送 |
小売業 | 商品企画・仕入れ・店舗運営・集客・販売・アフターサービス |
製造業 | 商品企画・設計・試作・調達購買・生産・流通・販売・保守 |
サービス業 | 事業企画・営業活動・サービス提供・料金徴収・カスタマーサポート |
農業 | 生産・収穫・加工製造・流通・販売 |
物流企業がバリューチェーン分析をする目的と注意点
自社のバリューチェーンを分析すると、今までとは異なる新しい視点で事業の現状を把握できます。ここでは、物流企業がバリューチェーン分析をする6つの目的を解説します。分析する際の注意点も紹介しますので、併せて確認しましょう。
コストの削減に取り組める
コスト削減は、企業が利益を伸ばすために重要な取り組みです。バリューチェーン分析では、機能ごとにコストを調査する工程があり、業務で発生するコストを詳細に調べてリスト化します。
リストに含まれるのは、コストがかかった活動内容や担当部署名です。どの作業にいくらかかったのかを全プロセスにわたって把握できるため、削減可能なコストが明確になります。
利益の向上が図れる
バリューチェーン分析の目的のひとつは、企業利益を増やすことです。主活動・支援活動それぞれの課題や強み、弱みを抽出して整理し、分析結果を活用して戦略的に分配することで、企業の付加価値が高まります。付加価値の強化により、市場で競争優位性を確立できるでしょう。
競合他社の動向が把握できる
バリューチェーンに着目すると、競合他社の動向予測が可能です。競合他社の主活動は基本的に自社と同じ、もしくは類似しています。競合他社のバリューチェーンに注目して情報を集めれば、どのようなポイントで他の企業と差別化を図っているかを推測できるでしょう。
競合他社が今後どのような戦略を取るのか予測することで、自社が優位に立つ戦略を立案できます。
自社の弱点や強みが分かる
バリューチェーン分析の過程で、プロセスごとに強み・弱みを分析します。自社が市場で強いか弱いかを判断するには、競合他社の情報が不可欠です。
強み・弱みの分析では、競合となる企業をリストアップし、それぞれの特徴を調査します。調査に活用するのは、競合他社の公開情報や市場レポートです。
競合企業と自社の強み・弱みを分析する手法として、SWOT分析があります。バリューチェーン分析は、企業活動全体を考慮した比較ができる点も魅力です。
市場で競合との差別化ができる
企業が市場で生き残るには、競合他社との差別化が必要です。差別化できる要素には「ブランドイメージ」「自社製品にしかない独自機能」「デザイン」などがあります。他社が容易に模倣できる技術・製品では、差別化できません。
他社との差別化を考える際は、消費者目線のバリューチェーン分析が重要です。特定の差別化要素にこだわると、製品の価格が高騰する、対象となる消費者が限定的になるといったデメリットが生じます。
市場の中で自社が競合他社よりも優位なポジションを築けるように、差別化戦略を検討しましょう。
注意!自社で完結している物流のみが分析可能
バリューチェーンの概念は、自社の業務プロセスを価値の連鎖として捉えます。調達から消費までの業務プロセスの中で、主活動が外部委託で途切れているとバリューチェーン分析が正しくできません。活動間の影響や価値の連鎖を正確に捉えるのが難しくなるためです。
バリューチェーン分析は、主活動の中に他社による作業がなく、自社完結型の企業に向いている手法といえます。
バリューチェーン分析の方法とポイント
バリューチェーン分析には、さまざまなプロセスがあります。事業規模が大きい企業ほど時間と労力を要しますが、どの作業も企業の経営にとって重要な情報をもたらすため、しっかりと理解することが大切です。ここでは、バリューチェーン分析の全体像とポイントを紹介します。
バリューチェーンを明確に細分化する
バリューチェーン分析の最初の作業は、対象となる事業の細分化です。事業を機能別、もしくは工程別に細分化して図式化します。細分化した事業を主活動と支援活動に分類し、実際の事業の流れに沿って並べましょう。
図式は分析の土台となるため、時間をかけて着実に作成することが大切です。自社の事業全体を把握する良い機会になるでしょう。自社事業のプロセスを詳細に把握することで、細分化した活動ごとの課題や強み・弱みが理解できます。
工程別のコストを把握する
次は、細分化した活動ごとのコストの調査です。項目ごとにコストをひとつひとつリストアップして、表計算ソフトで一覧表を作成します。どこにいくら費やしているかが分かるように、部署名・項目・発生日といった情報も記録しましょう。
1年間のコスト全てをリストアップすると膨大な量になりますが、全体像の把握は企業にとって重要なポイントです。
強みと弱みを分析する
自社の詳細な業務内容を理解したら、競合他社と比較します。市場で競争優位性を確立するには、他社との差別化につながる戦略を立案する必要があるためです。バリューチェーン全体で、自社の強み・弱みを分析しましょう。
この際、比較対象となる競合他社の情報が必要です。公開している情報やレポートを活用して、強み・弱みの判断ができる情報を集めます。
VRIO分析で競争優位性をリスト化する
VRIO(ブリオ)分析とは、競合他社と比較して自社の経営資源がどの程度優位かを分析するフレームワークです。
企業の経営資源を「価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣可能性(Inimitability)」「組織(Organization)」の4つの項目に分けて5段階で評価します。VRIOは、4つの頭文字を取った言葉です。
VRIO分析により「自社の経営資源の中核となる強みを明確化できる」「経営戦略の立案や見直しに活用できる」といったメリットがあります。分析結果を基に対策の優先順位を設定し、経営資源を適切に再分配できるリストを作成しましょう。
経営資源の再分配を検討する
企業価値の最適化を図るため、バリューチェーン分析の結果を基に経営資源の再分配を検討しましょう。
分析で明確になった他社にはまねできない中核能力(コア・コンピタンス)に集中的に投資し、市場での競争優位性を確立する方法があります。この他、幅広い領域に投資して将来の成長に向けた施策を打つなど、経営戦略に基づいて再分配しましょう。
競合との差別化を図り市場で競争力を維持するには、ひとつの分析結果だけに頼るのではなく、多角的な視点で市場環境や自社のポジションを捉えることが重要です。
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バリューチェーン分析により業務で発生するコストを特定しても、すぐに削減できるとは限りません。DXの推進により生産性向上を目指すのも利益の最大化に効果的です。
TRYETINGの『UMWELT』は、業務の自動化による生産性向上をサポートします。例えば、需要予測や在庫管理は、企業の利益に直結する業務です。しかし、経験豊富な従業員を必要とします。
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まとめ
バリューチェーン分析を用いて自社の弱み・強みを把握し、対策を講じることで市場での競争力を強化できます。コスト調査により、利益向上に向けたコスト削減も可能です。
利益向上には、業務を効率化して人件費などのコストを削減する手段もあり、DX推進はその達成に役立ちます。
UMWELTは、業務を自動化して生産性を向上するツールです。競争力強化や利益向上を目指す企業様は、ぜひTRYETINGにご相談ください。
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